「午前十時の映画祭14」トークイベント 戸田奈津子さんがスピルバーグ、ルーカス、ハリソン・フォードの秘話明かす

(2024年4月11日17:45)

「午前十時の映画祭14」トークイベント 戸田奈津子さんがスピルバーグ、ルーカス、ハリソン・フォードの秘話明かす
トークイベントを行った戸田奈津子さん

過去の名作を劇場の大スクリーンで鑑賞できる「午前十時の映画祭 14」(主催:川喜多記念映画文化財団、映画演劇文化協会、4月5日より開催中)がグランドシネマサンシャイン池袋で開催されることを記念して10 日、字幕翻訳家・戸田奈津子さんのトークイベント付き『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』特別先行上映が行われた。

14 回目を迎える今年の同映画祭のオープニングは、昨年シリーズ最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』が話題となったインディ・ジョーンズ・シリーズの3作品。新たな上映作品 19 本(外国映画 15 本、日本映画 4 本)、再上映作品8本の全27本が全国65劇場で約 1 年にわたって 順次上映される。

トークイベントでは『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の字幕翻訳を務め、また「午前十時の映画祭 14」作品選定委員でもある戸田さんが、公開当時のエピソードやハリソン・フォー ド、スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカスとの交流秘話、そして 「午前十時の映画祭 14」にかける思いなどを語った。

字幕翻訳の第一人者として知られる戸田さんは、これまで約 1500 本もの外国映画の字幕を 手がけ、トム・クルーズ、ロバート・デ・ニーロなどをはじめとする数々のハリウッドスターからの指名で来日時の通訳も行ってきた。

ハリソン・フォードとは 1978 年の『スター・ウォーズ』 来日キャンペーンでの通訳での出会いからの付き合いで、当時は全くの無名だったという。1991 年にはロサンゼルスのハリソン・フォードのご自宅に招かれるなど、公私ともに付き合いがある戸田さんならではの貴重な話が次々と飛び出した。

今回上映された『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』 は、ルーカス原案スピルバーグ監督、ハ リソン・フォード主演のアクション・アドベンチャー『インディ・ジョ ーンズ』シリーズの第2弾作品。

「午前十時の映画祭14」トークイベント 戸田奈津子さんがスピルバーグ、ルーカス、ハリソン・フォードの秘話明かす
『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の場面写真

「(1984 年の作品なので)数えれば 40 年前なんですよ。(第1弾の)『レイダース/失われたア ーク《聖櫃》』はわたしが字幕屋として成り立つ前の作品なので 先輩が担当したんで、わたしがこのシリーズを手掛けたのはこの 作品からですが、まさかこのあと5作目までやるなんて夢にも 思いませんでした。ここまで愛されるシリーズを担当させていただいて、冥利に尽きると思っていま す」と振り返った。

ルーカス、スピルバーグ、ハリソンが映画のプロモーションで来日した際には、幾 度となく通訳も担当してきたということもあり、3人とは親しい付き合いをしてきたという。
「この 3 人は本当に仲がよくて。3 人が東京で落ち合う機会があって。わたしもその場に居合わせたんですが、“friend”よりも親しい友だちの“pal”を使って『ハロー、パル!』と言いながら 3 人でハグ をしているのを見て。やはりあれだけの映画を撮ってきたので仲も良くなるんでしょうね。その中でも 一番長くお付き合いしたのがハリソンです」と明かした。

「午前十時の映画祭14」トークイベント 戸田奈津子さんがスピルバーグ、ルーカス、ハリソン・フォードの秘話明かす
ハリソン・フォード㊨と戸田奈津子さん

ハリソンについて 「彼はとても苦労した人で 20 代の時は無名なアクターだった。それがルーカスに見出され、『スター・ ウォーズ』に出ることになって。それで日本に宣伝に来たのですが、まだ日本では公開されてないから 誰も知らないわけ。T シャツにジーパンというラフな格好で目立たない。公開された後はすごいことに なりましたが。わたしもいろいろな俳優にお会いしてますけど、無名なところからビッグになった過程を見ることができたトップはハリソンです。ただ彼はスター扱いされるのを嫌がって。自分自身ではア クターとは言わずに、ストーリーテラーだというのが彼の口癖。本当に謙虚な役者だと思いました」。

さらにスピルバーグについて「彼は今でこそ白髪になっているけど、ハートが子どもなんです。オフィスには書類なんてなくて、ゲームマシーンやピアノが置いてあって。そして犬 が走り回っている。そこに子役の子どもたちがいて、『スティーヴン、あそぼ!』と言ってくるのね。あれほどの人なのに、彼は一緒になって子どもたちと遊んでるの。こういう気持ちを持っているから 『E.T.』みたいな映画がつくれるんだなと思いました。彼の頭の中は映画のことでいっぱいで。スポー ツとか政治の話をしているのは聞いた事がない。だからこそお客さんの心をつかむ映画ができるんで しょうね。いつ会っても気持ちのいい方です」とその人柄を解説した。

そしてルーカスについて、戸田さんの字幕翻訳家デビュー作となった『地獄の黙示録』に指名してくれたということもあり、「コッポラ監督はわたしにとっても大恩人ですが、彼がパーティに招待してくれて、そこにルーカスが来るというので、どんな方なのかしらと思っていたのですが、なかなか来ない。そろそろ宴もたけなわというところで、コソコソと来たのがルーカス。彼はちょっとだけ話して帰ってしまいました、本当にシャイで。いつも目を伏せていて、相手の目を見ないくらいシャイな人。で も何度も日本に来ていて、付き合いが深くなると、口を開くようになり、面白いジョークを言ってくれるようになる。『スター・ウォーズ』を見ても分かるけど、アイデアは本当にすごいでしょ。そんな彼がス ティーヴンと協力してつくりあげたのがこのシリーズというわけです」と説明した。

そして「この 3 人はそれぞれ人柄も違うし、暮らしも違う。でも映画が好きという のは共通しています。やはりハリウッドで生き残る人は本当に映画が好きでないといけないし、やはり 人間的魅力がないと駄目だと思います」と指摘した。

さらに「わたしも映画好きというところがスタートラインですから。それをまっとうできたということはうれしいですし、今日みたいに 40 年経った映画を皆さんが観に来てくださることはとてもうれしいこと」としみじみと付け加えた。 そして最後にグランドシネマサンシャイン池袋でも始まった「午前十時の映画祭 14」につい て、「わたしはずっと選考委員をしていますけど、本当に昔の映画はいい映画が多いんですよ。その中 から選りすぐった作品を上映していますので、どの作品を観ても損はありません。本当に観て良かったと思う作品ばかり。それは断言できます。今後もぜひとも見続けていただきたいと思います」と観客に呼びかけた。全スクリーンが4K 対応のグランドシネマサンシャイン池袋で「午前十時の映画祭 14」は絶賛開催中。

「午前十時の映画祭 14」
4月5日から、来年3月27日までの51週間。1 作品 2 週間上映(1 週間上映の作品もあり)。入場料金、開映時間は劇場によって異なる。上映劇場、上映スケジュールは公式サイト(https://asa10.eiga.com/)に掲載。

『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』TM & © Copyright Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
監督:スティーヴン・スピルバーグ 出演:ハリソン・フォード、ケイト・キャプショー、キー・ホイ・クァン
インディがインドの邪教集団に立ち向かう大ヒット・シリーズ第 2 弾。往年のミュージカルを彷彿とさせるオープニングからクライマックスのトロッコ・チェイスまで、スピーディで迫力たっぷりの見せ場が連続する。