新刊本「20世紀最高の映画100作品」 全米映画撮影監督協会が選ぶ 1位「アラビアのロレンス」

(2024年2月28日13:30)

新刊本「20世紀最高の映画100作品」 全米映画撮影監督協会が選ぶ 1位は「アラビアのロレンス」
「全米映画撮影監督協会が選ぶ『20世紀最高の映画100作品』」

新刊本「全米映画撮影監督協会が選ぶ『20世紀最高の映画100作品』」(古澤利夫著、ビジネス社刊、4950円)が2月21日、発売になった。1919年に設立された全米映画撮影監督協会(ASC)が100周年を迎えた2019年に100周年記念事業の一環として、「20世紀の映画撮影技術と芸術における画期的な100作品」を発表した。ASCの会員の投票によって選出されたリストはプロが選んだ最高の映画撮影監督を紹介する初めての試みで、投票によるトップ10を頂点として、全米公開順に並べたほかの90作品をもとに、「20世紀最高の100作品」をリストアップし、その作品の製作秘話や撮影監督の撮影エピソード、経歴などを詳細に紹介し、あまり知られていない撮影監督に焦点を当てた貴重な解説書になっている。

同著は元20世紀フォックス宣伝部長でサンダンス・カンパニー社長の古澤利夫氏が映画雑誌「フリックス」に連載した記事を基に刊行された。伝説の映画人が伝説の20世紀最高の映画を解説する。

ASCのシェリー・ジョンソン会長は「ASCは撮影監督の芸術性と技術を広めるために設立されました。そうしたASCの伝統に貢献し、世界中の才能豊かな撮影監督の技術にスポットを当てた本書に出会うことができて喜びを感じます」とのコメントを寄せた。
また、字幕翻訳家の戸田奈津子さんは「映画を愛する数多くの人々、特に映画製作に何らかの形でかかわりたいと思っている人々にとって、この本は得がたい教科書になるだろう。」と推薦文を書いている。

■第1位は「アラビアのロレンス」

第1位に選ばれたのは第35回アカデミー賞で作品賞、監督賞、撮影賞(カラー)など7部門を独占した、ピーター・オトゥール主演、デヴィッド・リーン監督の不朽の名作「アラビアのロレンス」(1962年、撮影監督:フレディ・ヤング)。実在のイギリスの陸軍将校T・E・ロレンスの自伝「知恵の七柱」をもとに2年3か月をかけて完成させた歴史超大作。同著では製作までの紆余曲折や撮影監督を務めたフレディ・ヤングが「ワイド・ショットの巨匠と称されるヤングの撮るシーンは圧巻で、ロレンスがマッチの火を吹き消すと暗転、直後、真っ赤に染まる広大な砂漠に朝日が昇るショットは絶賛された」(同著より)など数々の撮影エピソードが明かされて、名作の”表と裏”が浮彫りにされている。
以下第2位のハリソン・フォード主演のSF映画の名作「ブレード・ランナー」、第3位の「地獄の黙示録」など計100作品の名作・ヒット作が、撮影監督のエピソードを中心に解説されている。
ベスト10のほかの90作品の中に日本映画からは黒澤明監督の「羅生門」(1950)(撮影監督:宮川一夫)と「七人の侍」(1954)(同中井朝一)が選ばれた。

■「20世紀最高の映画100作品」ベスト10 (作品と製作年・撮影監督)

第1位 「アラビアのロレンス」(1962)(フレディ・ヤング)
第2 位 「ブレード・ランナー」(1982)(ジョーダン・クローネンウェス)
第3位 「地獄の黙示録」(1979)(ヴィットリオ・ストローラ)
第4位 「市民ケーン」(1941)(グレッグ・トーランド)
第5位 「ゴッド・ファーザー」(1972)(ゴードン・ウィリス)
第6位 「レイジング・ブル」(1980)(マイケル・チャップマン)
第7位 「暗殺の森」(1970)(ヴィットリオ・ストローラ)
第8位 「天国の日々」(1978)(ネストール・アルメンドロス)
第9位 「2001年宇宙の旅」(1968)(ジェフリー・アンスワース、ジョン・オルコット)
第10位 「フレンチ・コネクション」(1971)(オーウェン・ロイズマン)

■古澤利夫(ふるさわ・としお)・略歴

10代の頃から映画業界に入り1966年、20世紀フォックス映画 日本支社に入社。90年宣伝部長、91年宣伝本部長。97年12月20日公開の「タイタニック」で、当時の日本興行収入史上最高の263億円を記録。20世紀フォックス映画在社37年間に宣伝・配給に携わった作品は502本。その大ヒット作の多くでゴールデン・グロス賞最優秀金賞・銀賞、読売映画・演劇広告賞最優秀賞を受賞。映画界での長年の功績を評価され、98年に第5回南俊子賞、99年に第8回淀川長治賞を受賞。03年に20世紀フォックス映画を退職後も、ジョージ・ルーカスより直接「スター・ウォーズ エピソード3/シスの逆襲」の宣伝を依頼される。また、角川映画、ルーカスフィルム、ソニー・ミュージック、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントなどから配給・マーケティングの特別顧問を委嘱された。2018年までの53年間に宣伝・配給、企画・製作に携わった作品が817作品。その売り上げを合算すると6277億8600万円を超える。宣伝・配給、興行・製作の全方位を眺望する稀有の≪全身映画人≫。(同著の著者略歴より抜粋)