「落下の解剖学」夫の転落死で殺人罪に問われた妻の究極の裁判闘争

(2024年2月21日10:45)

「落下の解剖学」夫の転落死で殺人罪に問われた妻の究極の裁判闘争
「落下の解剖学」ポスタービジュアル

人里離れた雪山の山荘で男が転落死して、妻に殺人容疑がかかる。事故か、自殺か、殺人か、証人や検事により夫婦の秘密や嘘が暴露される。唯一の現場にいた証人は視覚障がいのある11歳の息子。「真相」をめぐって予断を許さない息詰まる裁判が展開されるサスペンス。
第76回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞、第81回ゴールデン・グローブ賞では脚本賞と非英語作品賞を受賞し、アカデミー賞の作品賞、監督賞にノミネートされている。

監督は、長編4作目の同作で第76回カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞したジュスティーヌ・トリエ。妻サンドラ役には、本年度映画賞レース主演女優賞の最有力候補の一人となっているザンドラ・ヒュラー。知的なポーカーフェイスで、底なしの冷酷さと自我を爆発させる圧巻の演技で、観客を一気に疑心暗鬼の渦へと引きずりこむ。
フランスで動員100万人超えの大ヒットを記録し、同カンヌ国際映画祭で審査委員長を務めたスウェ―デンの奇才リューベン・オストルンド監督から「強烈な体験だった」と破格の称賛を受けた。

「落下の解剖学」夫の転落死で殺人罪に問われた妻の究極の裁判闘争

【ストーリー】
雪山の山荘で、11歳の視覚障害のある息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)が犬を連れて散歩から帰ると、玄関先に父親のサミュエル(サミュエル・タイス)が倒れているのを発見して大声で母親のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)を呼ぶ。サンドラが駆け付けるとサミュエルは頭部から血を流し、すでに息はなかった。3階の窓から転落したとみられた。死因は不明で、頭部に殴打されてできた可能性もある傷があったことなどから、警察は転落事故とは考えにくく、不審死だとして妻(ザンドラ・ヒュラー)を疑い事情聴取する。妻は「私は殺していない」と潔白を主張。友人の弁護士ヴァンサン・レンツィ(スワン・アルロー)が弁護を担当して自殺説をとなえる。だが、前日に激しい夫婦喧嘩をしていたことが明らかになるなどして殺人容疑で逮捕され、検察は起訴する。
裁判では、事故前日に夫婦喧嘩をしたときのやりとりをサミュエルが録音していた音源が公開され、お互いに罵り合い物を投げガラスが割れる音やサンドラが夫のサミュエルに暴力をふるっているとみられる音など壮絶な喧嘩の様子が生々しく記録されていて、亀裂が深まっていた夫婦の関係が明らかになり、サンドラは窮地に陥る。弁護士のヴァンサンは前日の夫婦喧嘩から当日の事故を殺人と断定することは出来ないなどと反論して波乱の裁判が続く。

「落下の解剖学」夫の転落死で殺人罪に問われた妻の究極の裁判闘争
「落下の解剖学」夫の転落死で殺人罪に問われた妻の究極の裁判闘争
「落下の解剖学」夫の転落死で殺人罪に問われた妻の究極の裁判闘争
「落下の解剖学」夫の転落死で殺人罪に問われた妻の究極の裁判闘争
「落下の解剖学」夫の転落死で殺人罪に問われた妻の究極の裁判闘争

【見どころ】
疑惑の渦中で、友人の弁護士に支えられながら裁判で無罪を証明するために作家ならではの分析力や表現力を駆使して疑惑を晴らすために気丈に闘う妻役でザンドラ・ヒュラーが圧巻の熱演を見せている。ドイツ人ベストセララー作家のサンドラが、教師をしながら作家を目指している夫が成功できないでいることを激しく罵り、自身の生き方の正当性を主張し、夫が反論する夫婦喧嘩のシーンは壮絶でこの作品の核となっている。2人の言い争いの中に、子供を持つ夫婦の子育ての問題やベストセラー作家として成功した妻と作家を志しながら教師をしてる夫との格差の問題などザンドラ一家の様々な問題が浮き彫りにされていく。
さらには、スワン・アルローが冷静に戦略を立てて裁判に望む弁護士ヴァンサン役で存在感を見せ、現場にいて唯一の証人となり裁判で証言する息子のダニエル役をミロ・マシャド・グラネールがリアルに演じており、謎の多い事件の迫真の裁判劇は法廷で傍聴しているような没入感と共に最後まで目が離せない。

【クレジット】
監督:ジュスティーヌ・トリエ
脚本:ジュスティーヌ・トリエ、アルチュール・アラリ
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ
配給:ギャガ 原題:Anatomie d'une chute
2023年|フランス|カラー|ビスタ|5.1chデジタル|152分|字幕翻訳:松﨑広幸|G 
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2024年2月23日(金祝) TOHOシネマズ シャンテ他全国順次ロードショー