第66回ブルーリボン賞授賞式 3度目の主演女優賞・吉永小百合「これからも映画の世界でやらせていただきたい」

(2024年2月8日22:20)

第66回ブルーリボン賞授賞式 3度目の主演女優賞・吉永小百合「これからも映画の世界でやらせていただきたい」
前列左から山崎貴監督、浜辺美波、神木隆之介、吉永小百合、佐藤浩市、石井裕也監督、(後列左から)黒川想矢、倍賞千恵子、二宮和也、東宝東和・山﨑敏社長(8日、東京・千代田区のイイノホールで)

東京映画記者会(在京スポーツ紙7社で構成)が選ぶ「第66回ブルーリボン賞」(2023年度)の授賞式が8日、東京・千代田区のイイノホールで開催され、「長崎ぶらぶら節」(00年)以来23年ぶり3度目の主演女優賞の吉永小百合(78 )らが出席した。コロナ禍で見送られていた授賞式が4年ぶりに復活。前年度に主演賞を受賞した二宮和也(40)と倍賞千恵子(82)が司会を務めた。

第66回ブルーリボン賞授賞式 3度目の主演女優賞・吉永小百合「これからも映画の世界でやらせていただきたい」
吉永小百合

「こんにちは、母さん」(山田洋次監督)で主演女優賞を受賞した吉永は「キューポラのある町」(62年)、「長崎ぶらぶら節」(00年)に続く最多タイの3度目の主演女優賞で、昭和、平成、令和の3代で主演女優賞受賞の快挙となった。

吉永は「ブルーリボン賞の受賞、飛びっきりうれしゅうございます。本当にありがとうござます」と言うと、会場は大きな拍手に包まれた。
そして「15歳の時に映画の世界に入りました。アルバイトのつもりだったんですけれども、翌年に16本の映画に出演することになって、その年の最後に撮ったのが『キューポラのある街』(62年)でした。そしてその作品で作品賞と女優賞をいただいて、とてもうれしく思って、それから長い年月がたちました」と日本の映画界を代表する女優の一人として駆け抜けてきた女優人生を振り返り、「ここまで長くやってこれたのは一緒にやってくださったスタッフの皆さんのおかげだと思いあらためて感謝しております」と感謝の言葉を述べた。

そして司会の倍賞について、「ずいぶん前に『男はつらいよ』に2本出させていただいて、私がそのころ私生活でも悩んでいて、倍賞千恵子さんにとても温かくしていただいたのを今思い出しました」と話した。(『男はつらいよ 柴又慕情』72年、『男はつらいよ 寅次郎恋や連れ』74年)

第66回ブルーリボン賞授賞式 3度目の主演女優賞・吉永小百合「これからも映画の世界でやらせていただきたい」
”息子”の二宮和也㊧と再会した吉永小百合

「そして山田洋次監督の『母と暮らせば』(15年)で二宮和也さんと共演させていただいて、それ以来、本当の息子みたいになっちゃって。いろいろ心配なことはあったと思うんですけど、今回は大変だったと思うんですけど、急にお母さんになっちゃった」と旧ジャニーズ事務所(現・SMIL-UP.)から独立した”息子”の二宮を気遣った。「これからも頑張って。映画も全部見てますから」とエールを送った。二宮は「本当におめでとうございます」と”母”を祝福した。

そして「そろそろやめた方がいいんじゃないっていう人もいますが、これからも映画の世界でやらせていただきたいと思っていますので、どうぞこれからも映画館でどんな映画でもいいですけども観てて頂くのが私の願いです。今日は本当にありがとうございました」と締めくくって大きな拍手に包まれた。

第66回ブルーリボン賞授賞式 3度目の主演女優賞・吉永小百合「これからも映画の世界でやらせていただきたい」
”ゴジラポーズ”の㊧から山崎貴監督、神木隆之介、浜辺美波

■「ゴジラ-0.1」3冠 作品賞、主演男優賞・神木隆之介、助演女優賞・浜辺美波

山崎貴監督(59)の「ゴジラ-0.1」は作品賞、神木隆之介(30)の主演男優賞、浜辺美波(23)の助演女優賞を受賞した。

主演男優賞の神木が登壇すると、「ハウルの動く城」(04年)で声の共演をした司会の倍賞がアドリブで、「マルクル、マルクル大好き」と神木が声を担当した少年の名前を呼び、「本当、大きくなったね」といって祝福。神木は「この度は名誉ある素敵な賞を受賞出来て幸せです」と喜んだ。
最近、高校時代の友人と撮影現場で再会したといい、彼はアメフト部員だったが映画に影響されて技術うスタッフとして働いていることを知り「映画って人生のターニングポイントになる」と思ったという。「なかなか人の思い出に残れることはないと思うので、そんなお仕事ができているのは幸せでうれしいことだなと思います。根症をいただいたということを胸に刻んでこれからも、皆様の思い出に残れるような役者になっていきたいと思ってます」と語った。
その後、「ゴジラ-0.1」で共演した浜辺も一緒に並び、浜辺は「お笑いコンビみたい」と笑わせ「2年以上ご一緒させていただいて、神木さんが座長として皆さんを導いてくれるパワーに本当に助けられています」と感謝した。

助演女優賞を受賞した浜辺は「2023年は、『シン・仮面ライダー』、そして『ゴジラ-0.1』と、まさか共演できるとは思っていなかった生き物、生物たちと共にすることができ、本当に素晴らしい、幸せをかみしめる日々でした」と言って笑わせた。「監督にはたくさんのご指示をいただきまして、導きをいただきました。本当に幸せでした」と感謝の言葉を述べた「この賞を胸にこれからも自分らしく芸事の道をまっすぐ上を向いて歩んでいきたいと思います」と抱負を語った。

山崎監督は「作品賞ということで、スタッフ、キャストのみんなが評価されたということで本当にうれしく思います」といい「ずっと長く僕のプロデュースをやってくださった阿部秀司プロデューサーが、昨年『ゴジラ』がすごくヒットして、皆さんに喜ばれているなかで、亡くなってしまったので、そういう意味でもすごく自分のなかで大きな作品になった」と語った。そして「それも含めて、すごくエンタメに振った作品をこういうところで表彰していただいて、しかも、うちの子たちが賞をいただいたっていうのは、本当に幸せなことですし、ブルーリボン賞なかなかやるなと思いました」と語った。

第66回ブルーリボン賞授賞式 3度目の主演女優賞・吉永小百合「これからも映画の世界でやらせていただきたい」
佐藤浩市



■佐藤浩市、父親の三國連太郎さんと共に3冠達成

「愛にイナズマ」(石井裕也監督)、「せかいのおきく」(阪本順治監督)で助演男優賞を受賞した佐藤浩市(63)は「本年度は何度も登壇させていただく機会にめぐまれまして大変ありがたく思っています」とスピーチを始めたが、司会の二宮が横をを向いているのを見て「聞けよ!人の話」とツッコんで会場を爆笑させた。
「わたしも四十数年前に新人賞をいただきまして」というと司会の二宮が「81年ね」(「青春の門」)と補足すると、今度は「(台本に)書いてあるんだろ」と言ってまた笑わせた。
そして「こうして何度も登壇させていただいているのは、去年公開された作品でいかにいい出会いがあったかということ」と石井監督や阪本監督らに感謝した。「少なくとも10年以上はやっていきたいと思いますが、その中でいろいろと新しい今までにない自分、それに出会ってみたいと思います」と今後の抱負を語った。
佐藤は81年委新人賞、02年に主演男優賞を受賞しており、3冠達成。父親の三國連太郎さんも51年に新人賞、60年、89年委主演男優賞、79年に助演男優賞を受賞。個人賞の3冠は佐藤と三國さんの2人だけだという。

第66回ブルーリボン賞授賞式 3度目の主演女優賞・吉永小百合「これからも映画の世界でやらせていただきたい」
石井裕也監督



■監督賞・石井裕也「忖度して表現をあきらめてしまうた状況と闘った」

「月」、「愛にイナズマ」で監督賞を受賞した石井裕也監督(40)は、商業映画デビュー作「川の底からこんにちは」(10年)で、史上最年少(28歳)で同賞を受賞して以来13年ぶりの受賞となった。「映画作っている人間だったら誰もが憧れるブルーリボン賞を受賞出来て本当に光栄です」と喜び、一方で「監督賞いただいて本当にうれしいんですけど、監督の立場から言えば、スタッフや俳優の皆さんが受賞すると本当に嬉しい」といい、「愛にイナズマ」に出演した佐藤浩市について「映画の奥深さと面白さを教えていただいている感じがします」と語った。
相模原市で起きた障碍者殺傷事件(16年)をモチーフにした芥川賞作家・辺見庸氏の同小説を映画化した「月」では、殺人犯の考えや施設の実態に鋭く切り込んで描いた。「表現の限界に挑戦したといわれました。監督もう一言。いろんなご苦労があったと思うんですけど一番はどういうことですか」と倍賞に促され「やってはいけないというか、やったらまずいんだろうという世の中に流れている空気。それをもうちょっと真剣に深く考えればやってはいけないルールはないし、規制もないはずなのに、我々が自主的に忖度して表現をあきらめてしまうとか、言いたいことがあっても言わないようにしてしまうといった状況と闘ったというイメージでした」と語った。  

第66回ブルーリボン賞授賞式 3度目の主演女優賞・吉永小百合「これからも映画の世界でやらせていただきたい」
黒川想矢



■新人賞・黒川想矢「『怪物』で皆さんからいただいたものを宝物にして頑張っていきたい」

映画初出演の「怪物」(是枝裕和監督)の演技で新人賞を受賞した黒川想矢(14)は「ちゃんと考えてきたんですけど、真っ白になっちゃって」というと、司会の倍賞が「いいの、いいの」と助け船を出し、黒川はコメントを書いた紙を取り出して読み上げた。クランクイン前には「監督の求める演技が何なのか。それをどう表現したらいいのかわからなくてすごく悩みました」という。「撮影中は周りが見えておらず、是枝組の迷惑をかけたと思います」と振り返った。そして、「劇場公開後に多くの方からお褒めの言葉をいただき、今まで経験したことのない素晴らしい景色を見せていただきました」という。撮影後に主演の安藤サクラから「僕の中からバリバリって音がして何かが出てきた」といわれ、「自分1人で破ったわけではなく、皆さんが撮影中に一生懸命(殻を)叩いてくださって、僕が最後にぶち破ったのかなと思いました」といい「『怪物』で皆さんからいただいたものを宝物にして頑張っていきたい」と語った。

■外国作品賞「ザ・スーパーマリオブラザース・ムービー」

外国作品賞の「ザ・スーパーマリオブラザース・ムービー」では配給元・東宝東和の山﨑敏社長が登壇して、「この作品は大変よく知られているゲームをハリウッド映画化するという非常にプレッシャーのかかるプロジェクトだったと思います。それをはねのけてすばらしい作品を作ってくれました」語った。そして、共同監督のアーロン・ホーバスとマイケル・イエレニックから寄せられた喜びのコメントを代読。「このような栄えある賞をいただきまして大変光栄です。イルミネーションのアーテイストたち、そして任天堂の友人たちに感謝します。彼らのコラボレーション精神がなければこの作品はできませんでした」と製作会社の米アニメ制作会社イルミネーションと任天堂に感謝した。

■第66回ブルーリボン賞 受賞作、受賞者

作品賞「ゴジラ-0.1」(山崎貴監督)
監督賞 石井裕也(「月」「愛にイナズマ」)
主演男優賞 神木隆之介(「ゴジラ-0.1」「大名倒産」)
主演女優賞 吉永小百合(「こんいちは、母さん」)
助演男優賞 佐藤浩市(「愛にイナズマ」「せかいのおきく」など)
助演女優賞 浜辺美波(「「ゴジラ-0.1」、「シン・仮面ライダー」)
新人賞   黒川想矢(「怪物」)
外国作品賞 「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」

【ブルーリボン賞】1950年(昭25)創設。 「青空のもとで取材した記者が選出する賞」が名前の由来で、当初は一般紙が主催していたが61年に脱退。 67~74年の中断を経て、東京映画記者会主催で75年に再開。 ペンが記者の象徴であることから、副賞は万年筆。映画に取り組む姿勢や人柄も選考に含まれるのが特徴。授賞式は例年、前年度の主演賞受賞の2名が司会を務める。在京スポーツ紙7紙はサンケイスポーツ、スポーツニッポン、スポーツ報知、デイリースポーツ、東京スポーツ、東京中日スポーツ、日刊スポーツ(50音順)