「奇想天外映画祭2022」上映作品「リキッド・スカイ」が緊急アンコール公開

(2022年10月13日20:30)

「奇想天外映画祭2022」上映作品「リキッド・スカイ」が緊急アンコール公開
「リキッド・スカイ」(© Slava Tsukerman)(「奇想天外映画祭2022」新宿K’s cinemaにて2022年9月17日(土)~10月7日(金)開催決定!)

「奇想天外映画祭2022」(9月17日~10月7日、新宿K’s cinema)で「80年代ニューヨークの無機質な熱狂が蘇る」などと好評を博した1982年製作の米SF映画「リキッド・スカイ」40周年記念4Kデジタル修復版が10月29日~11月4日、新宿K’s cinemaにて1週間限定緊急アンコール公開されることが決定した。

■ストーリー

人間の目に見えないエイリアンたちを乗せた小さな宇宙船がマンハッタンのアパートの屋上に降り立つ。彼らはヘロインを求めている。このアパートにはモデルのマーガレット(アン・カーライル)が、ドラッグの密売人でガールフレンドのエイドリアン(ポーラ・E・シェパード)と暮らしている。やがてマーガレットと関係をもつ男たちがエクスタシーに達する途端に息絶え、姿を消すという奇怪な現象が相次いで発生する。西ドイツから調査にやってきた科学者によって、性的オーガズムによって脳内に分泌される物質が、ヘロインと同じ作用をもたらすことがわかり、エイリアンの狙いがその物質にあることが明かされる。しかしいまや復讐の鬼と化したマーガレットは、これまで性的関係を強要してきた男たちにオーガズムを与えることで、彼らを葬り去ってゆく…。

「奇想天外映画祭2022」上映作品「リキッド・スカイ」が緊急アンコール公開
「リキッド・スカイ」(© Slava Tsukerman)



■プロダクションノート

このまさに奇想天外な映画を監督したのはスラヴァ・ツッカーマン。1940年モスクワ生まれ。1973年にイスラエルに移住し、ドキュメンタリー映画を製作していたが、映画祭で2度ほど訪れたアメリカに強いカルチャーショックを受ける。情報が閉ざされた共産主義下で世界のことを何もわかっていなかったと感じたスラヴァは、故国に別れを告げ、女優でもあり、脚本と映画批評を学んでいた妻・ニーナと共にアメリカ・ニューヨークへの移住を決意する。その時のことをスラヴァは、「ニューヨークこそが、その世界の中心、文化の中心であると思えました。すべてのことがニューヨークで起きていました。そうして、ニューヨークに移り住んだのです。」と語っている。
そして、ニューヨークで新生活を始めたスラヴァ夫妻が、キャスティングするなかで知り合ったのが、当時のクラブカルチャーのムーブメントの最先端にいたファッションモデルのアン・カーライルだ。意気投合した3人は、ニーナの書いた原案をアンが脚色する形でシナリオが制作された。そして、アンが一人二役の主演を演じることになった。
まさにこの時代が生んだ痛快で“ぶっ飛んだ”「リキッド・スカイ」はカルトの枠を超えた唯一無二の作品として鮮やかに光り輝く。今回40周年記念として4Kレストアされたデジタル・リマスター版が公開される。
製作・監督:スラヴァー・ツーカーマン/出演:アン・カーライル、ポーラE・シェパード、ボブ・ブラディ/1982/アメリカ/112分/カラー

「奇想天外映画祭2022」上映作品「リキッド・スカイ」が緊急アンコール公開
「リキッド・スカイ」(© Slava Tsukerman)



「リキッド・スカイ」へのコメント

■スラヴァ・ツッカーマン監督
私は当時の世界の問題をすべて取り入れたかったのです。地球外生物の襲来、ドラッグ、ロックンロール、セックス、そういったものです。物語はいわゆるシンデレラもので、この映画のシンデレラはパンクモデルですが、王子様を求めています。しかしだれもが彼女を虐待します。彼女は現実世界で王子様を見つけられません。小さな宇宙船で地球外から来たエイリアンが、彼女にとっての王子様だったのです。こうして私の周囲にあったもの、すべてが映画に取り入れられました。

■アン・カーライル
『リキッド・スカイ』は、当時のクラブ文化を忠実に描いています。多くの登場人物は、実際に私たちの知り合いがモデルとなっています。ジミー役にしても、あんな少年が本当にいたのです。一緒にモデルの仕事をしていたとき、彼は私のことを“chicken woman”と呼んだのです。エイドリアンのモデルとなった人も実在しました。映画向きに誇張されているものの、あんな人たちが実際にいたことによって、この映画は当時の文化をリアルに反映しているわけです。

「奇想天外映画祭2022」上映作品「リキッド・スカイ」が緊急アンコール公開
「リキッド・スカイ」(© Slava Tsukerman)

■小島秀夫(ゲームクリエイター)
まさか 4K リストア版の”あの空“が観られるなんて!80 年代ニューウェーブなビジュアル、ファッション、ネオンカラー、サウンド!当時は劇場公開に行けず、ビデオをレンタルしては何度もキメた。いやあ、効いた。好きだったわ。後に VHS を買ったくらい。40 年ぶりに吸引してみてわかった。僕の脳内には今も「リキッド・スカイ」が残留し、発光している!令和の若者たちにも、サブスク映画時代には決して生まれえない真の“カルト作”に陶酔してみて欲しい。


■柳下毅一郎(映画評論家)
空にUFO、地にはテクノ。『リキッド・スカイ』は 1980 年代ニューヨーク・インディーズの忘れられた秘宝だ。時代の刻印をもっとも濃密に刻みながら、それゆえにタイムカプセルに封じこまれたカルト映画となった。今、数十年ぶりに封印を解かれ、瞬間冷凍され た 1982 年のニューヨークが甦ったのである。宇宙の彼方から快楽物質を求めて地球にやってきた宇宙人。彼らを迎えるのは 80s のニューヨーカーだ。UFOは運命的にモデルのマーガレットが住む家の真上にやってくる。マーガレット=アン・カーライルこそ、この時代の美学を体現した不感症の快楽主義者であるからだ。この映画の顔となったアン・カーライルは「デヴィッド・ボウイよりもアンドロギュノス(両性具有的)だ」と言われる中性的な美に輝く。アン・カーライルはマーガレットだけではなくコカイン中毒の男性ジミーの役をも性別を超えた二役で演じ、自分で自分とセックスする。文字通りの自涜行為というわけだ。男からも女からも欲望されるセクシャルなヒロインだが、グラマラスな蠱惑的美女ではない。むしろ中性的な、ほとんど性を嫌悪しているかのようにも見えるいつも不機嫌な仏頂面である。だが、それこそが 80s の理想形ではなかったか。肉欲なきセックス。身体なきダンス。アン・カーライルはそれを体現したのである。

■上野耕路(作曲家)
Sex, Drag and Electronic Musicその後何本もの映画/ドラマで共犯者となる同世代の映画監督との初仕事で、参考曲にリキッドスカイのサントラの”Noon”と”Jimmy’s Theme”があった。僕が喜んだのは言うまでもない。One of My Best 80s Films/Fim Musics.

■MASASHI (作曲家、ギタリスト from CASCADE)
僕は知らなかった。中性的な主人公、全編に無機質なリズムボックス、サイケデリックなネオンカラーに彩られたオーガズム、究極なまでにコンパクトに表現された Sex & Drug & Violence な SF カルトムービーを僕は知らなかった。2022 年の今、初めて見た「LIQUID SKY」。この映画が公開された 1982 年に、嫉妬してます!

■ジョニー志田(ラジオ DJ)
80s ニューヨークのヴィヴィッドなサウンド&ビジョン!時代を超えた未知との遭遇に思わずレッツ・ダンスだ!

■滝本誠(映画評論家)
こういうイ・キ・カ・タがしたい