「ツユクサ」 小林聡美、松重豊が訳あり中年男女の人生讃歌を熱演

(2022年4月27日10:00)

「ツユクサ」 小林聡美、松重豊が訳あり中年男女の人生讃歌を熱演
「ツユクサ」(©2022「ツユクサ」製作委員会)(配給:東京テアトル)

小林聡美、松重豊が訳あり中年男女の不器用だが心情あふれる恋情のやりとりを繰り広げる人生讃歌のラブロマンス。脚本家・安倍照雄によるオリジナルストーリーを「愛を乞う人」(1998年)、「学校の怪談」シリーズ、「閉鎖病棟―それぞれの朝―」(2019年)などの平山秀幸監督が映画化した。旧知の2人が10年以上温めてきた人生讃歌の物語で、過去の問題を抱えながらも今の幸せや希望を求めてひたむきに生きる主人公・五十嵐芙美を「かもめ食堂」(2006年)、「めがね」(2007年)などの演技で定評がある小林聡美が演じ、松重豊、平岩紙、江口のりこら実力派俳優が脇を固めている。主題歌は中山千夏の「あなたの心に」(ビクターエンタテインメント)。

■ストーリー

とある小さな田舎町で暮らす芙美(小林聡美)は、ボディタオルを作る会社で働きながら一人暮らしをしている。同じ職場の直子(平岩紙)と妙子(江口のり子)は、何でも話せる友達で、直子の一人息子の航平(斎藤沙鷹)とも大の仲良しだ。一緒に遊びに行ったり、髪を切ってあげたり、養父・貞夫(渋川清彦)とうまく話せないというので相談に乗ったりしていた。
そうしたなか、わけあって通っていた断酒会の帰り道、芙美が運転する車に隕石が落ちて車が転倒する事故が起きる。航平は隕石に遭遇する確率は1億分の1だという。そんな奇跡のような恋愛が50歳を目前にした芙美に訪れる。なじみのバーでナポリタンを食べながらマスター(泉谷しげる)と話していると、ジョギング中に何度か見かけた草笛が上手な警備員の篠田(松重豊)がやってきて、親しく話すようになる。ツユクサが草笛に適していることを篠田に教えられ草笛に挑戦したりしながら距離を縮めていくが、2人ともある悲しみを抱えて生きていた。そして芙美が過去を乗り越えて前に進むドラマが待ち受ける。

「ツユクサ」 小林聡美、松重豊が訳あり中年男女の人生讃歌を熱演
「ツユクサ」(©2022「ツユクサ」製作委員会)(配給:東京テアトル)

■見どころ

平山監督は、「『エヴェレスト 神々の山領』『閉鎖病棟―それぞれの朝―』といった、作る方も観る方も力が入って構えるような作品が続いたので、今回はリキまない映画づくりをしようと思っていました」、「本を読んだ時に『いい読後感』という表現があるとすれば、その感覚を映画でもやれないかなとは思っていました。心地よさとか、ふんわりした楽しさとか、そんなものが残せる作品になればいいなと」などと語っているが、芙美と篠田の出会いと恋のこの物語は、まさに「いい読後感」の世界であり、小林と松重の実力派俳優2人が熟練の演技でその世界を見せてくれる。
子役の斎藤も小林との掛け合いでいい味を見せており、さらには小林、平岩、江口の3人のからみも秀逸である。気の置けない世間話や恋バナはあけすけにしてコミカルでハートウォーミングな笑いを誘う。松重演じる篠田の小林扮する芙美に対する告白は唐突でぎこちないが、芙美がそんなもどかしさをあっさりと超えて自然に感情を溢れさせていくシーンに象徴される人生讃歌がある。
(4月29日(金・祝)全国公開)