「オートクチュール」華麗な高級仕立服のアトリエを舞台にした師弟の葛藤と絆

(2022年3月日15:00)

「オートクチュール」華麗な高級仕立服のアトリエを舞台にした師弟の葛藤と絆
「オートクチュール」(© PHOTO DE ROGER DO MINH)

高級ブランド、ディオールの華麗な高級仕立服の製作現場を舞台に、引退を目前に控えたオートクチュール部門のベテランお針子エステルと、彼女に見込まれて弟子入りする移民二世の少女ジャドとの交流と葛藤を描いた物語。主役のエステルに「恋愛日記」(1977年)などのフランソワ・トリフォー監督の作品や「勝手に逃げろ/人生」(1979年)などのジャン=リュック・ゴダール監督の作品に多く出演し、フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞を4回受賞(「愛しきは、女/ラ・バランス」1983年など)しているフランスの名女優ナタリー・バイ。エステルに見込まれる少女ジャドに「パピチャ 未来へのランウェイ」(2019年)などのリナ・クードリなどのキャスト。監督・脚本は小説家で2011年の自作の小説「Papa Was Not a Rolling Stone」を2014年に映画化し、2016年のトロントユダヤ映画祭で長編映画賞を受賞したシルヴィー・オハヨン。
ちなみに「オートクチュール」(フランス語:haute couture)とは、「パリ・クチュール組合(通称サンディカ)の加盟店で注文により裁縫されるオーダーメイド一点物の高級服やその店のこと」(Wikipedia)。(ディオールやシャネル、ジバンシーなどがサンデイカ加盟店。1950年代まではパリコレはオートクチュール・コレクションだったが1960年代からのプレタ・ポルテ・コレクションが興隆して、現在は双方のコレクションを指すのだという)

■ストーリー

ディオールのオートクチュール部門のアトリエ責任者エステル(ナタリー・バイ)は引退を間近に控えて、最後となるコレクションの準備に追われていた。そうしたなか、地下鉄でジャド(リナ・クードリ)にハンドバックをひったくられる。ハンドバッグに高級宝飾品が入っていたことから怖くなり、ジャドはエステルを探してバッグを返す。エステルはジャドが手先が器用なことを見込んで、警察に通報する代わりにアトリエで見習いとして働くことを持ち掛ける。気の強いジャドはアトリエでいじめを受けて相手に暴行したり、エステルともけんかしてやめてしまうが、やがてアトリエに戻りエステルの指導を受けながらプロのクチュリエ―ルを目指して情熱を燃やしていく。

「オートクチュール」華麗な高級仕立服のアトリエを舞台にした師弟の葛藤と愛と希望
「オートクチュール」(© PHOTO DE ROGER DO MINH)

■見どころ

映画の衣装デザイナーのキャリアを持ち、現在はディオール専属クチュリエ―ル(女性裁縫師)のジュスティーヌ・ヴィヴィアン監修のもと、初代”バー”ジャケットや重ねづけされたプリーツが軽やかに揺れる”フランシス・プーランク”ドレスに、直筆のスケッチ画など、貴重なアーカイヴ作品の数々がスクリーンに登場する。また、引退を間近に控えたベテランのお針子エステルと、郊外に暮らす移民二世の少女ジャドの出会いと、ディオールのアトリエを舞台にした母親のように親友のように少女に技術や心構えを教えていくドラマは見ごたえがある。ジャドに期待を寄せて教え込む孤高のお針子をフランス映画界を代表する女優ナタリー・バイが熱演して存在感を見せている。そして映画デビュー作「Les Bienheureux」(2017年)でヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門の主演女優賞を受賞。2019年のカンヌ国際映画祭出品作の「パピチャ 未来へのランウェイ」(2019年)に主演して第45回セザール賞有望若手女優賞を受賞。またウェス・アンダーソン監督の新作「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」でビル・マーレイやティモシー・シャラメと共演。カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション作品の「ガガーリン」(2020年)など活躍が目覚ましいフランス映画界の新星リナ・クードリが個性的にパワフルにジャドを演じている。
(3/25(fri) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国公開)