「ディア・エヴァン・ハンセン」ミュージカル仕立てで描く青春の嘘と真実

(2021年11月26日21:40)

「ディア・エヴァン・ハンセン」ミュージカル仕立てで描く青春の嘘と真実
「ディア・エヴァン・ハンセン」(TOHOシネマズ 六本木ヒルズ)

2015年に初演されて大ヒットしたブロードウェーの同名ミュージカルの映画化。主人公の高校生エヴァン・ハンセンが同級生の自死をめぐって彼の家族に親友だったと嘘をついたことがきっかけで繰り広げられる嘘と真実のドラマをミュージカルをまじえて描く。ハンセンにミュージカル版でも演じたペン・プラットのほか、ハンセンの母親に「アリスのままで」(2014年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したジュリアン・ムーア、コナーの母親に「アメリカン・ハッスル」(2013年)と「ビッグ・アイズ」(2014年)でゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞したエイミー・アダムスの2人の実力派女優が脇を固めている。
監督は「美女と野獣」(2017年)、「ワンダー 君は太陽」(2018年)などのスティーブン・チョボスキー。「You Will Be Found」などの劇中の楽曲を「ラ・ラ・ランド」「グレイテスト・ショーマン」のコンビ、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが手掛けた。今年の第34回東京国際映画祭(10月30日~11月8日)のクロージング作品として上映された。

■ストーリー

学校に友達もいなく母親に勧められ薬を服用しセラピーに通っている高校生のエヴァン・ハンセン(ベン・プラット)はある日、自分自身にあてて書いていた「ディア・エヴァン・ハンセン」(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)と始まる手紙を、同級生のコナー・マーフィー(コルトン・ライアン)に持ち去られてしまう。それは誰にも見られたくない「心の声」が描かれた手紙だった。すしたなか、コナーが自死したことを知らされる。
コナーの両親は彼が持っていたハンセンの手紙を見て息子の親友と勘違いして、ハンセンを家に呼び息子のことを聞こうとする。同席していたコナーの妹のゾーイ(ケイトリン・デヴァー)はハンセンが兄に学校で床に押し倒されているのを見ていたのでいるのを見て親友だったことを疑っていたが、優しく気弱なハンセンはコナーの母親に事実を告げられず親友と嘘をつき嘘の思い出話をしてしまう。学校で行われたコナーを追悼する会でハンセンが語ったスピーチが感動を呼びネット上で瞬く間に拡散。ハンセンはコナーの両親に息子のように扱われ、妹のゾーイも彼に好意を寄せるなどハンセンはヒーローのように扱われるが、ある事件をきっかけに事態は思わぬ方向に発展していく。

■見どころ

ベン・プラットが高校生ハンセンの青春の悩みや葛藤・希望・恋を繊細な演技と歌で演じている。そして息子を自死で失った母親をエイミー・アダムスが、夫と離婚して女手1人でハンセンを育ててきたシングルマザーをジュリアン・ムーアが円熟して演技で存在感を見せている。ケイトリン・デヴァーもコナーの妹役ゾーイ役を好演している。演技の途中からハンセンらが歌い出すミュージカルシーンも違和感なく挿入されていても見どころ一つになっている。ハンセンが思いやりや優しさや気弱さから思わずついてしまった嘘が「嘘から出た実」になり、さらにそれが崩壊して嘘がむき出しになった後の、ハンセンが「自分らしさ」を取り戻そうとする決意やコナーの両親、妹、ハンセンの母親の受け止めなど最後まで目が離せない展開が続く。
(2021年11月26日公開)