「罪の声」小栗旬と星野源が未解決事件の闇に迫る社会派ミステリーを熱演

(2020年10月31日11:50)

「罪の声」小栗旬と星野源が未解決事件の闇に迫る社会派ミステリーを熱演
「罪の声」(TOHOシネマズ渋谷)

塩田武士氏の小説「罪の声」を映画化した本格的社会派ミステリー。小栗旬、星野源、松重豊、古舘寛治、宇野祥平、篠原ゆき子、火野正平、梶芽衣子、宇崎竜童らのキャストで、「いま、会いにゆきます」(2004年)、「涙そうそう」(06年)、「麒麟の翼~劇場版・新参者~」(12)、「映画ビリギャル」(15年)などのヒット作を手掛けた土井裕泰監督がメガホンをとった。

1984年から1985年にかけて「かい人21面相」を名乗り食品会社を標的にした脅迫事件のグリコ・森永事件がモチーフになっている。大企業の社長を誘拐して身代金を要求したり、食品に毒物を混入して店頭にばらまいたりして脅迫を繰り返し、警察をあざ笑うような挑戦状を送りつけるなど異様な展開で社会不安を掻き立て劇場型犯罪といわれた。捜査線上に「キツネ目の男」が浮上し似顔絵が公開されたが犯人グループの特定に至らず2000年に時効となり未解決事件になった。この事件では犯人が現金の受け渡し場所を指定するときに子供の声を使っていたが、このことに注目したのが塩田武士の小説「罪の声」で、あくまでフィクションだが「キツネ目の男」や脅迫された食品会社を連想させる看板など実際の事件をほうふつとさせるシーンも登場する。

■ストーリー

京都で亡き父の後を継いでテーラーを営む曽根俊也(星野源)は、父親が残した遺品の中からカセットテープと黒皮のノートを発見する。ノートには英文がびっしりと書かれ「ギンガ」と「萬堂」の文字があり、テープには子供の声が入っていた。35年間に起きた大手菓子メーカーのギンガと満堂をはじめ食品会社数社が脅迫され未解決になったギンガ・満堂事件の犯人が使った子供の声と同じで、しかもそれが自分の声だとわかり、真相を知ろうと奔走する。
一方、大日新聞大阪本社の記者・阿久津英士(小栗旬)は未解決事件の特集で「ギン・満事件」を担当することになり、取材を進めるうちに俊也にたどり着く。俊也は阿久津に協力を求められて最初は断るが、やがて2人は手を組んでギン・萬事件の犯行グループと事件の深層に迫って行く。

■みどころ

もしかしたら、これがあの事件の真相なのかもしれないと思わせるリアリティがある。映画の「ギン・萬事件」の構造や犯人グループの人間関係などが綿密に描かれていてフィクションと実際の事件がクロスして最後まで目が離せない展開が続く。実際の事件で金の受け渡し場所を指定する際に犯人グループは3人の子供の声を使うとい前代未聞の手口を使ったが、その音声が公開され当時テレビのニュースでも流れ異様な展開を見せたのは記憶に新しい。その声の主の35年後にスポットを当てて、事件の闇に迫った。小栗旬と星野源が緊迫の社会派ミステリーを熱演している。(2020年10月30日公開)