「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」 ウディ・アレンのおしゃれなロマンティック・コメディ

(2020年7月05日11:50)

「レイニー・イン・ニューヨーク」
(「レイニーデイ」・イン・ニューヨーク」=東京・渋谷区の恵比寿ガーデンシネマ)

ウディ・アレン監督が今最も旬なティモシー・シャラメとエル・ファニング、セレーナ・ゴメスを起用して、雨のニューヨークを舞台に繰り広げられる若い男女の恋愛模様を描いたロマンティック・コメディ映画。予想不能なジェットコースターのような波乱に富んだ展開や、ニューヨークの美しい街並み、架空の映画スターや監督らも登場して“アレン・マジック”で魅了する。

■ストーリー

生粋のニューヨーカーのギャッツビー(ティモシー・シャラメ)は同じ大学に通うアリゾナ出身の恋人アシュレー(エル・ファニング)が大学新聞の取材で有名な映画監督ポラード(リーヴ・シュライバー)にインタビューすることになり、一緒にニューヨークに行って街を案内しロマンチックな週末を過ごそうとする。ところが、アシュレーはポラード監督に新作映画の試写に付き合わされ、映画が気に入らないと監督が蒸発して、プロデユサー(ジュード・ロウ)と一緒に探すハメになり、映画関係者が集まるパーティーで売れっ子俳優に口説かれたり次々にハプニングに見舞われる。一方、ギャツビーは元恋人の妹(セレーナ・ゴメス)と偶然再会し、雨が降るニューヨークで想定外の恋愛ドラマが繰り広げられる。 ■見どころ

長いセリフを俳優が饒舌にまくしたてながらのウイットに富んだ会話や、ドラマ展開などアレン監督独特の演出は健在だ。ティモシー・シャラメが生粋のニューヨーカー役で存在感を見せ、エル・ファニングは映画監督やスターらに取り囲まれて舞い上がり暴走するアリゾナ娘を熱演。そしてセレーナ・ゴメスがシニカルで大人の女の魅力を振りまくニューヨーカーを演じて存在感を見せている。セントラル・パークやカーライル、メトロポリタン美術館などのニューヨークの美しい街並みを舞台に繰り広げられるコメディタッチのロマンスは極上のエンターテインメントだ。後述の通り、アレン監督の性的疑惑再燃で俳優たちが出演を公開したことを公表したり、米国では公開中止になるなど物議をかもしたが、それでもこの作品が放つ魅力は色あせない。 (2020年7月3日公開)

■ウディ・アレン監督の性的虐待疑惑

本作は北米で2018年に公開される予定だったが撮影が終了した2017年、大物プロデュ―サー、ハーベイ・ワインスタインの多数の女優らに対する性的虐待疑惑事件が発覚したのをきっかけに、ハリウッドに性的疑惑を告発する「#MeToo」運動が盛り上がり、ウディ・アレン監督(84)に性的虐待疑惑が取りざたされて、製作のアマゾン・スタジオは公開を中止した。アレンはこれを不服として、2018年2月に同スタジオを契約不履行で訴えた。その後2019年にポーランドで公開をされたのを皮切りにヨーロッパを中心に公開され、日本でも公開される運びとなった。

アレン監督は1980年代から90年代にかけて女優ミア・ファーロー(75)と交際していたが、1992年に彼女の養女ディラン・ファーローが「7歳のときにアレンから性的虐待を受けた」と告発。さらに2017年に米ロサンゼルス・タイムズに性的虐待に関する書簡を公開した。

アレン監督は「25年前に告発を受けて、病院とニューヨークの福祉保健局が数か月にわたって綿密な調査を行ったが、どちらも『性的虐待はなかった』という結果になっています」「そのとき『夫(アレン監督)と喧嘩別れして腹を立てた母親(ミア・ファロー)が子供を洗脳して、ウソのストーリーを話すよう指導することはできる』と証明されたのです」などとする声明を発表して潔白を主張した。

しかし、「#Me Too」運動が盛り上がるなか、同作に出演した俳優らが遺憾の意を表明して、アマゾンがアレン監督との契約をキャンセルするなど波紋が広がった。

そうしたなか、スカーレット・ヨハンソンが「私はウッディを愛しています。彼を信じているし、どんなときでも彼と仕事をするつもりです」と断言して監督を援護。
これに対してディランはツイッターで「もし過去2年間に何かを学んだのなら、性的に人を食い物にする男の潔白の主張を疑うこともなく信じたりするべきではない。スカーレットはこの問題を理解するにはまだほど遠い」などとヨハンソンを痛烈に非難した。

本作に主演したシャラメは2018年、インスタグラムで、ギャラを受け取りたくないので出演料の全額を性的虐待を告発するTime's Upなどの3つのチャリティー団体に寄付すると表明。ほかにも、レベッカ・ホールとグリフィン・ニューマンがギャラの寄付を発表。セレーナ・ゴメスやエル・ファニングも出演料をTime's Upに寄付して出演したことを後悔しているなどと表明した。