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「子どもたちをよろしく」 中学生のいじめと家族の崩壊をリアルに描く

(2020年3月2日)

「子どもたちをよろしく」 中学生のいじめと家庭の崩壊をリアルに描く
「子どもたちをよろしく」(ユーロスペース)

子供たちのいじめの問題やその背景にある家族の崩壊、社会の格差などを描いたシリアスな作品。元文部官僚で映画評論家の寺脇研氏が企画・統括プロデュ―サー、前川喜平元文科省事務次官が企画を担当し、「ワルボロ」(2007年)の隅田靖が監督・脚本を担当した。

■ストーリー

「東京にほど近い北関東のとある街」が舞台。実の母親・妙子(有森也実)と義父・辰郎(村上淳)、辰郎の連れ子で中学2年生の稔(杉田雷麟)と4人で暮らしている優樹菜(鎌滝えり)は、酔った辰夫から性的虐待を受けて自らを「汚れた存在」と思い込みデリヘルで働くようになっていた。母親は見て見ぬふりをし辰夫のDVに怯えながらキッチンドランカーになってしまう。稔はそんな両親に怒りを募らせていた。
稔のクラスメートの洋一(椿三期)の父親・貞夫(川瀬陽太)は、優樹菜らデリヘル嬢をラブホテルに運ぶ運転手をしていたが、妻に逃げられパチンコにはまり借金を重ねる自堕落な生活を送っていた。稔たちのグループは洋一を「デリヘルの運転手の息子」とののしるなど執拗にいじめ続ける。そうしたなか、ある日稔は優樹菜がサダオが務めるデリヘルで働いている事を知ってショックを受け、自分もいじめられるのではないかと怯える。優樹菜、稔、洋一は家族崩壊やいじめの中で絶望しもがきながらそれぞれの行動をとっていく。

■見どころ

Netflixのオリジナル映画「愛なき森で叫べ」のヒロインに抜擢された鎌滝えり(24)がデリヘルで働く優樹菜を熱演している。また、「半世界」(2019年)、ドラマ「Aでない君と」(2018年)などに出演している稔役の杉田雷麟(17)、昨年9月にファーストアルバム「1999」をリリースした大型新人バンド「The Flying Videotape」のメンバーで今作が映画初出演となった洋一役の椿三期(16)が役にはまったリアルな演技を見せている。子どもたちのいじめや非行などの問題の多くは大人たちの問題や社会の問題が生んだものではないかという事を突きつけられる映画だ。

前川氏は「この作品は、中学生のいじめと自殺、その裏にある家庭の問題をリアルに描いている。とても重い映画。しかしこれは現実だ。この現実に一人でも多くの人が気付くのが大事なのだ」(「子どもたちをよろしく」の公式サイトから)とコメントを寄せている。