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「ラストレター」 ラブレターをめぐって交錯するそれぞれの想いが切なくも美しいラブストーリー

(2020年1月18日)

「ラストレター」ラブレターをめぐって交錯するそれぞれの想いが切なくも美しいラブストーリー
「ラストレター」(TOHOシネマズ渋谷)

「Love Letter」(1995年)、「スワロウテイル」(96年)、「四月物語」(98年)、「花とアリス」(04年)、「リップヴァンウィンクルの花嫁」(16年)などの作品で知られる岩井俊二監督が初めて出身地の宮城を舞台に描いた恋愛映画。ラブレターの行き違いをきっかけに繰り広げられる高校生姉妹と転校生の恋愛と大人になってから姉妹の娘たちもからめたそれぞれの人生を、松たか子、福山雅治、広瀬すず、神木隆之介、森七菜、豊川悦司、庵野秀明、中山美穂などのキャストで抒情的に描いている。

■ストーリー

裕里(松たか子)の姉の美咲が亡くなって、葬儀で美咲に生き写しの娘・鮎美(広瀬すず)から、美咲宛ての高校の同窓会の案内状を渡された裕里は、美咲の死を報告するために同窓会に出席するが、高校の生徒会長でヒロインだった姉と勘違いされてしまう。そして同窓会に来ていた初恋の相手で今は小説家になっていた鏡史郎(福山雅弘)と再会する。裕里は鏡史郎が恋をしていた美咲になりすまして彼に手紙を書き続ける。そのうちに手紙が鮎美のもとに届いてしまい、鮎美は高校時代の鏡史郎(神木隆之介)と美咲(広瀬すず)、そして裕里(森七菜)の思い出をたどっていき、美咲の死の真相やそれぞれの過去と現在の想いが浮かび上がって来る。

■みどころ

初恋のクラスメイトは姉を恋していたというところから行き違いが始まる。クラスメイトから託されたラブレターを姉に渡さず、姉になりすまして返事を書いてしまう。それがバレて結局姉とクラスメイトはいい仲になるのだが、その妹が成人して再び姉になりすまして初恋の元クラスメイトに手紙を書くという入り組んだ2人の関係を軸にして展開するラブスト―リーが、なんとも甘く切ない上に美しく抒情にあふれている。

高校時代のピュアな恋愛とラブレターという甘美な思い出と、それをいつまでも忘れられず恋人の面影を追い続ける男の心情や、姉妹の娘たちの想いがからんで心が洗われるラブストーリーが繰り広げられる。松たか子や福山雅治、そして広瀬すず、神木隆之介がそれぞれの役を繊細にしっとりと演じているのも見どころになっている。

行き違いの手紙といえば岩井監督の1998年のヒット作「Love Letter」(1995年)のテーマにもなっていた。中山美穂演じるヒロインが山で遭難して死亡した恋人の面影を追い続け、恋人が昔住んでいた住所に手紙を書くと中学時代の同姓同名のクラスメートの女性(中山が2役)から返事が返ってきて文通を続けるというストーリーだった。ヒロイン役の中山と彼女に思いを寄せる男性を演じた豊川悦司が、「ラストレター」で一緒に暮らすパートナーとして登場して福山演じる鏡史郎と絡むシーンもあった。岩井監督は今作を「Love Letter」の“パート2”的な作品といっているという。さらには松たか子が22年前に出演した岩井監督の「四月物語」があり、同作のヒロイン卯月と「ラストレター」の裕里のキャラクターが似ていると岩井監督が言っていたとも。「ラストレター」を見た後に「Love Letter」と「四月物語」を観たくなる。そんな余韻を残す作品だ。(1998年)
(2020年1月17日)