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「ホテル・ムンバイ」 テロリストに占拠された最高級ホテルで従業員が奇跡の宿泊客救出劇

(2019年10月2日)

「ホテル・ムンバイ」 テロリストに占拠された最高級ホテルで従業員が奇跡の宿泊客の救出劇
「ホテル・ムンバイ」 (TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

2008年11月26日から29日にかけて、インド最大の都市ムンバイで起きたイスラム過激派の同時多発テロで、テロリストに占拠されたタージマハル・ホテルの従業員と宿泊客の奇跡の脱出劇の実話を題材にしたドキュメントタッチのサスペンス映画。オーストラリア・アメリカ・インドの合作で監督は長編初監督作品となったオーストラリア出身のアンソニー・マラス。「スラムドッグ$ミリオネア」(2008年)に主演したデブ・パテルや、「君の名前で僕を呼んで」(2017年)のアーミー・ハマー、「アイアンマン」(2008年)などのイラン人女優ナザニン・ボニアディらのキャスト。

■ストーリー

臨月の妻と幼い娘がいる青年アルジュン(デヴ・パテル)は海に面した最高級ホテルのタージマハル・ホテルの従業員として働いていた。アメリカ人の宿泊客デヴィッド(アーミー・ハマー)とその妻で富豪の娘のサーラ(ナザニン・ボニアディ)は生まれて間もない娘を乳母付きで同伴してチェックインするなど、ゴージャスな宿泊客が次々にやってきてアルジュンらホテルの従業員はその世話に余念がなかった。

そうしたなか、爆薬や自動小銃、手りゅう弾で武装したイスラム過激派のテロリストたちが海からボートで上陸して、混雑する駅や人気レストラン、病院、映画館などで一斉に爆弾テロや大量殺戮を繰り返した。そしてタージマハル・ホテルも標的になり、テロリストのグループが従業員や宿泊客に銃弾を浴びせて殺害しホテルを占拠。手当たり次第に宿泊客を殺害していく。特殊部隊が1300キロ離れたニューデリーにしかいなくて到着までに数日かかるという絶望的な状況の中で、ホテルの従業員たちはオベロイ料理長(アヌパム・カー)の指揮のもと惨劇の中で生き残った多数の宿泊客を救出するために命懸けの作戦を展開する。

■みどころ

映画化にあたって実際の生存者にインタビューするなど当時の記録を徹底的に調べたという。それだけにホテルに残る従業員たちの決死の宿泊客の救出劇はリアルで圧倒される。テロリストが迫るなか上司から「家に帰ってもいい」といわれても「ここが家です」とホテルに残る従業員たちの勇気と誇り。またインドを代表するタージマハル・ホテルの荘厳な存在感も圧巻だ。一方、「アラー・アクバル!」(神は偉大なり)を連呼して容赦なく宿泊客や従業員たちを殺害して行くイスラム過激派のテロの戦慄の描写や、テロリストの青年が家族との電話で「金はもらったか」と話して泣き出すくだりや、宿泊客の一人がイスラム教徒だと知って引き金を引けなくなるテロリストなどテロリストの実態も詳しく描かれている。当時のテレビのニュースの映像も流れて、事件の現場にいるような臨場感と緊迫感でスクリーンにくぎ付けになる。
(2019年9月27日公開)