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「人間失格 太宰治と3人の女たち」小栗旬が破滅型作家・太宰治役で迫真の演技

(2019年9月15日)

「人間失格 太宰治と3人の女たち」
「人間失格 太宰治と3人の女たち」 (東京・渋谷区のシネクイント)

「走れメロス」「斜陽」「人間失格」などで知られる作家・太宰治(1909年~1948年)と妻、愛人2人の3人の女たちとの愛憎劇を小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみらのキャストで蜷川実花監督が映画化した。小説「人間失格」を原作にしたものではなく、太宰と3人の女性のスキャンダラスな実話をもとに描いたフィクションになっている。

■ストーリー

「女生徒」「富嶽百景」「走れメロス」などの小説が評価される一方で、破滅的な私生活で知られる人気作家の太宰治(小栗旬)は不倫に溺れる生活を送っていた。身重の妻・美知子(宮沢りえ)との間に2人の子供がいながら、作家志望の太田静子(沢尻エリカ)を愛人にしただけでなく、美容師の山崎富栄(二階堂ふみ)は秘書兼愛人のような存在になっていた。静子との間に娘(後の作家・太田治子)が生まれ、山崎との不倫が抜き差しならない深みにはまっていく。そうしたなか体調が悪化して血を吐くようになりながら、「人間失格」の執筆にとりかかり完成させるが、その直後に当時のマスコミを騒然とさせた1948年6月13日のあの”事件“へと突き進んでいく。

■見どころ

「斜陽」のモデルとなった歌人・太田静子、そして太宰の”最後の愛人“となった山崎富栄は実在の太宰の愛人で、小栗旬が2人の愛人と妻の間で揺れ動く太宰が乗り移ったような演技を見せている。愛人との情事で見せる甘美で虚無的な太宰。さらには、病に侵され血を吐きくシーンや「人間失格」執筆時などで鬼気迫る迫真の演技を見せて、最近の小説家たちには全く見られなくなった究極の破滅型作家・太宰治がスクリーンに蘇る。

沢尻と二階堂の女の情念を燃やす熱演も見ものだ。部屋に青酸カリを置いて太宰に命がけで執着する愛人役で二階堂が体当たりの演技を見せている。蜷川監督といえば「さくらん」(2007年)、「へルタースケルター」(2012年)や「ダイナー」(2019年7月)などで見せた圧倒的場ビジュアルでも知られるが、今作では太宰を取り巻く男女の愛憎劇の描写に力点が置かれて、ドラマ展開が濃密になっているのが見どころになっている。
(2019年9月13日公開)