「初恋 お父さん、チビがいなくなりました」結婚50年目の夫婦の危機と再出発を藤&倍賞が熱演

(2019年5月14日)

  • 初恋 お父さん
  • 「初恋~お父さん、チビがいなくなりました」(渋谷HUMAXシネマ)

藤竜也と倍賞千恵子の映画界のレジェンドが結婚50年目を迎えた老夫婦が、ペットの猫が行方不明になったことをきっかけに様々な夫婦の問題に向き合うことになるドラマを熱演している。西炯子の同名人気コミックを小林聖太郎監督がメガホンを取り実写映画化した。

子供達が巣立ち2人きりで晩年を過ごす結婚50年目を迎えた老夫婦。帰宅すると玄関で妻の武井有喜子(倍賞)に靴下を脱がせてもらい「おい」「飯」「風呂」としか言わないような亭主関白の武井勝(藤)。夫婦の会話が途絶えて久しいなか、有喜子は不満を紛らわせるように猫のチビに語り掛ける毎日だった。ある日、有喜子は次女の菜穂子(市川実日子)に「お父さんと別れようと思っている」と告白したために、長男・雅紀(小市慢太郎)、長女・祥子(西田尚美)も巻き込んで子供たちは大騒ぎに。そんななか猫のチビが姿を消して、事態は思わぬ方向に向かっていく。

絵にかいたような昭和の男とそれを当たり前のように受け入れて来た妻の日常がゆっくりと描かれていくが、有喜子が離婚を口にするのをきっかけに俄然ドラマが動き出す。元日活のスター俳優で、大島渚監督の「愛のコリーダ」(1976年)でカンヌ国際映画祭を席巻し、最近では北野武監督の「龍三と七人の子分たち」(2015年)、テレビドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日)などで幅広い演技を見せている藤。「男はつらいよ」シリーズでの寅さんの妹さくら役で国民的女優になった倍賞。その2人が老夫婦を時にユーモラスに、またはシリアスに、いぶし銀の演技で演じている。2人が胸に秘めてきたお互いの熱い思いを初めてさらけ出してぶつけあうクライマックスシーンは胸を打たれる。
(2019年5月10日公開)