「夜明け」柳楽優弥が心に闇を抱えた青年を熱演

(2019年1月19日)

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  • 「夜明け」(新宿ピカデリー)

是枝裕和監督と西川美和監督の作品で監督助手を務め、2人が立ち上げた制作者集団「分福」に所属する広瀬奈々子の監督デビュー作として注目されている意欲作。脚本も担当した。

従業員数人の小さな木工所を経営する涌井哲郎(小林薫)は、ある日川岸に倒れている青年 (柳楽)を発見して自宅で介抱する。青年はシンイチと名乗り、哲郎は彼に木工の技術を教え込んで一人前の職人にしようとする。木工所の先輩・庄司大介(YOUNG DAIS)たちもシンイチを迎え入れようとするが、シンイチは偽名で青年はある秘密を抱えていた。哲郎もまた忘れることができない過去を引きずっていて、シンイチの過去を受け入れて2人で新たな出発をしようとする。

シンイチが抱える心の闇の描写。そして哲郎の気持ちにこたえようとしながらも揺れ動く様をきめ細かく描く手法は師匠・西川監督の「ゆれる」を思い起こさせるテイストも感じさせる。それはともかく柳楽が心に深い闇を抱えてもがく青年を独特の個性で演じて存在感を見せていて、いったいシンイチはどうなっていくのか最後まで引き付けられる。さらには小林が渋い演技で存在感を見せ、DAIS、堀内敬子ら脇役陣も好演してドラマを盛り上げている。作家性にこだわったオリジナル脚本でのデビューで今後の活躍を期待させる。(2019年1月18日公開)