菅官房長官VS東京新聞・望月記者の吉本問題をめぐる”攻防”全内容

(2019年7月25日)

菅官房長官VS東京新聞・望月記者の吉本問題をめぐる”攻防”全内容 望月記者の質問に答える菅官房長官(政府インターネットテレビから)

菅官房長官が24日の記者会見で、吉本興業タレントの反社会勢力相手の闇営業問題に言及したのは東京新聞の望月衣塑子記者の質問に答えたものだった。現在公開中の映画「新聞記者」の原案となった同名著書の著者で、菅官房長官との連日の”攻防“で注目されている。 24日の菅官房長官とのやり取りの全容とは―。

「政府インターネットテレビ」の会見の模様を録画した動画によると、望月記者は「吉本興業のタレントが反社の会合に出席し金銭を受け取った問題に関し、平井大臣は昨日、法令順守の徹底や説明責任を期待せざるを得ないと発言し、長官は経産省の管轄のもと適切に実施という発言でしたけども、これ政府としては官民ファンドでの吉本の関連する100億円出資の見直しはしないという、こういう理解でよろしいですか」と質問した。

22日に吉本の岡本社長が会見で、所属タレントが反社会勢力の会合に出席して金銭を受け取った問題を謝罪したことを受けて、平井IT担当大臣は「吉本興業はクールジャパンのコンテンツ制作者として非常に有力な企業の1つであることは間違いなく、法令順守の徹底や、きちんとした説明責任を期待せざるをえない」と語るなど、法令順守の徹底を求める閣僚からの発言が相次いだ。これを受けての質問だった。

菅官房長官は「吉本興業の問題について個別企業のコンプライアンスにかかわる問題であり、その点にコメントすることは控えます」とした上で「一般論として申し上げればクールジャパンコンテンツの担い手として法令順守の徹底などについてしっかり説明していくことが重要ではないかと認識しております。なお関連事業については経産省の監督の下に適切に実施していく。こういうふうに聞いてます」と回答した。

 記者「吉本興業は官公庁の仕事を多数請け負ってます」「見直しは」

望月記者はさらに「吉本興業は近年、今回のことに限らず官公庁の仕事を多数請け負ってますし、首相が吉本の舞台(吉本新喜劇)に出演しG20の呼びかけをされたり、普天間移設を前提にした内閣府の懇談会委員を大﨑会長が務めるなど、政権との近さを疑問視する声も出ております。この反社との関係、トップのパワハラというのが問題視されている中で、こういったさまざまな事業に関しても政府として見直そうとかそういう意識はございますでしょうか」と政府の対応を追及した。

 菅官房長官「あー、適切に対応していくということです」

しかし、菅官房長官が「あー、適切に対応していくということです」と答えると司会が間髪入れずに「はい、ありがとうございます」と大きな声で言って会見は打ち切られた。

「普天間移設を前提とした内閣府の懇談会」というのは、「今後返還される普天間飛行場、牧港補給地区及び那覇港湾施設をはじめとする在日米軍施設・区域の跡地利用について、その核となる施設・機能のありうるオプションの検討を行う」「基地跡地の未来に関する懇談会」というもので、大﨑会長はその委員の1人で、6月20日に会合が開かれている。

所属タレントの反社会的勢力相手の「闇営業」や「テープ録ってへん?」「会見やるなら全員クビ」などの社長のパワハラまで発覚した吉本が、税金を使った国の関連事業に関与するのを政府として「見直そうという意識はあるのか」と問い正したわけだが「適切に対応」の一点張りのようだ。これまで適切に対応してこなかったから今になって問題が噴出しているのではなかろうか。

「芸人との契約書なしは問題」公取委事務総長が指摘

一方、吉本がタレントと契約書を交わしていないことも「問題」とされた。朝日新聞25日付け朝刊によると、公正取引委員会の事務方トップにあたる山田昭典事務総長は24日の定例会見で、公取委の有識者会議が示した判断を踏まえ、「契約書面がないということは、問題がある」と述べたという。「直ちにそれが独禁法上の問題になるというわけではないが、契約内容が不明確であることを通じて優越的地位の乱用などの独禁法上問題になのある行為を誘発する原因になりうる」と述べたという。

吉本所属タレントの反社会的勢力相手の「闇営業」の問題は、宮迫博之と田村亮の”号泣会見“、岡本社長の”グダグダ会見“を経て”加藤浩次の乱“と所属タレントの不満爆発に続いて今度は「契約書の問題」「政権との近すぎる関係」などが噴出し、政界にまで波及して波紋は広がるばかりだ。