岩手県知事が記者会見で「自民党と旧統一教会の関係」を指摘

(2022年7月16日21:30)

岩手県知事が記者会見で「自民党と旧統一教会の関係」を指摘
記者会見する達増拓也知事(岩手県の公式サイトから)

岩手県の達増拓也知事(58)が15日の記者会見で、安倍晋三元首相の銃撃事件と関連して報じられている旧統一教会(‘世界平和統一家庭連合)と自民党との関係について指摘した。

10日投開票の参院選で、岩手1区は新人の自民党・広瀬めぐみ候補が現職の立憲民主党・木戸口英司候補を破って当選した。木戸口氏は立憲民主党・小沢一郎氏の元秘書で自民に敗れて「小沢王国に異変」などと報じられた。

達増知事は「与党志向が強まった。それは選挙前からの与党の勢い、選挙中の山際発言(後述)、そして選挙終盤の一大事、そういったことから与党志向が強まったといえるのではないか」と分析した。(岩手県の公式ホームページの動画から、以下同)

そして「政治の主役は国政であれば国民、基本は岩手1区の皆さんが国民として今後どう進んでいくかということだと思うんですけれども。そこは特定の政治家との関係うんぬんというよりも、まずは直面する戦後最大の難局にして有事に、有権者の皆さんがそれをどう受け止めて政治に何を願っていくのか。そしてその政治に対する願いというときに、やはり今マスコミなどで急激に噴出して広がっている自民党政権と旧統一教会、およびその関連団体との関係ということ、それを岩手1区の有権者の皆さんもどう見ていくのかということではないかと思います」と語った。

「今回自民党の比例候補で賛同会員と言いましたか、旧統一教会の準会員とでも言いましょうか、賛同会員というのがあったと記憶しますが、それになっていた人が、もともと安倍首相の秘書でしたか秘書官でしたかを務め、今回自民党比例候補として立候補して、かなり極端な政策を主張して様々マスコミやネットで話題になっていた。しかし当該団体の応援もあって今回当選を果たしたっていうことのようで、この辺はさらなる分析が必要だとは思いますけれども、論点としては、あまり宗教団体というのもよくないかもしれません、個別具体的な当該団体とその関連団体のグループが国政選挙に影響を及ぼし、結果にも影響を及ぼし、かつ政策にも影響を及ぼしているという、それを検討する入り口になるような事例ははっきり比例選挙であったといっていいと思う。そういったところから様々検討していくといいんじゃないかと思います。事実関係はさらに検証されていかなければならないので、まだ今は論点としてあるという論点ベースで私も研究しますけれども」と指摘した。

名前は出さなかったが、第1次安倍政権のときに首相秘書官を務めた自民党の井上義行議員を指しているとみられる。全国比例区で出馬して当選した。選挙期間中の7月6日、さいたま市文化センターで行われた旧統一教会の集会で井上氏があいさつしたと報じられている。

知事は「まず政策が非常に極端で、家族というものを強調するあまり、女性の権利とか、またLGBTの方々の権利を極端に否定する。そして団体の活動としては一般の常識からみて法外な寄付金等を集めて、そしてそのお金を基にした活動で国政選挙の結果に影響を及ぼしていく。そういう団体が自民党と深く結びついているということを検証していくべきということです」と指摘した。

「宗教団体とかいう言葉を使わない方がいいと僕は思っています。問題なのは多くのお金の集め方の問題と、そのお金の使い方、そして政治的な理念、政策があるということですね。それが実は自民党の憲法(改革)案とか、そういったところにも反映されているのではないか、というような論点が検証されなければならないと思います。今の段階では決めつけませんけど論点としてはあると思います」という。

そして自身の政策「シン・ポリティクス」について「『シン・ポリティクス』というのは私の個人的なブログにA41枚ぐらいにまとめて書いてありますが、旧統一教会とその関連団体が主張している理念政策と正反対で、かつやり方についても団体の強制力とか、人の自由意志と違うところで政治を動かしてゆくというのと正反対で、草の根の地方に生きる暮らしの現場や仕事の現場に一生懸命やっている人たちの、自由意志を集めて政治を作っていこうという主張なので、潜在的には今後1年間の中で私はそういう考え方が伸びていく方がいいんじゃないかなあと思っておりまして、そういう意味では新ポリティクスというのはさらに磨き上げていかなければならない考え方ただなと思っています」と訴えた。

また野党共闘について「野党共闘の非常に大きな論点が、共産党とどういう形で連携するかということだったとも思うんですね。旧統一教会と関連の団体のグループは勝共連合という団体も中に入っているように、とにかく反共というのを理念の中核に据えているわけで、そういうものが強くなればなるほど、共産党と連携していいのかということで、そちらの旧統一教会関係をめぐる検討議論が今後どう進んでいくかということが野党共闘の在り方にかなり影響を及ぼすと思っています」という。

「僕は東大のころから、民青(日本共産党の青年部組織)と原理(旧統一教会系の原理研究会)の闘いとうのが東大の名物で、共産党青年部と原理研究会が激しいバトルを繰り広げているのを学生時代から見ているし、外務省で働いているときも、そういったものがいろいろあるということを見聞きし、衆院議員のときもそうで今に至っているんで、そういったことをみんな知るべき時に来ていると今思います」という。

「そして共産党や共産主義をめぐって、日本でそういう勝共連合のようなものができて活動を始めていることもあって、今に至っているっていうのがあって、野党共闘が最近ガタガタしたのは、やっぱり共産党と直接連携するのはよくないっていう雰囲気に影響されてなったわけですけど、自民党・与党の勢いが選挙前から高まっていたという中で、そういう自民党・与党への忖度、その忖度の中には共産党と距離を置くという忖度も入っていたのかどうか、その背景に勝共連合とかの関係もあったということが今後も検討されるべき論点なんだと思います」としている。

「いま日本が直面している戦後最大の難局というのは、ここ10年の政策がもたらしたというところもあって、いわゆるアベノミクスと消費税率引き上げという組み合わせが世界でもまれにみる長期不況と実質的低賃金と円安構造を作ってしまって、そして今この目の前の物価高やそういった問題に世界で一番対応しにくいような構造ができちゃっている。そしてウクライナ戦争への対応にしても、やはりこの10年間日米同盟の強化というところに力を入れて国連改革、ゼレンスキー大統領が国会で日本にメッセージで出した主題である日本による国連改革を問うことについてあまり力を入れてこなかった10年という、そこが今目の前の危機にうまく対応できない背景になっていると、そこを正していくために消費税減税という政策をシンボルにしながら野党共闘がまとまった過去もあると思うんですけれどその方向性は維持されるのではないかと思います」という。

「そしてそうした経済政策や安全保障政策のさらに背景に、旧統一教会とその関連団体の影響があって新自由主義的な政策ですね。格差がなくなって実質賃金がどんどん上がっていくようなそういう社会においては、旧統一教会と関連団体がやっているような献金の働きかけとかというのはうまくいきにくいんじゃないか思うんですよね。そして勝共連合という団体もあるんですけど、反共ということを強調することで北朝鮮中国との対立関係を正面に持ってきて、日米同盟強化と言って国連改革にあまり手を出さないっていうようなところにも、そういう団体の影響があるとすれば、そういう団体の影響の検討っていうことも野党共闘の重大な任務になっていくんじゃないかと思います」と指摘した。

当選した自民の広瀬めぐみ氏がマスコミのインタビューに、やっと“ねじれ”がなくなり岩手県にとってもいいことだと思うなどと述べ「(野党系の)知事は変わるべきだ。国政のパイプがなければ利益を得られない」というコメントをしていたことについて記者から聞かれ「私もそれは朝日新聞で読みました。読んですぐこれは山際大臣(山際大志郎経済再生担当相)が八戸でおっしゃったことと同じことをいっているなあと思いました。これは山際大臣だけではなくて自民党全体の政府、大臣の発言政権を挙げての基本的考え方という状況になっているわけですけれども、行政上の不公正我々を支持しない地方には不利益を与えるぞという行政上の不公正をちらつかせて、その地方の政治的自由を奪おうとするということだと思うんですけど、私はそれは非常に良くないということを以前からずっと思っていて」「信念としてそういう政治をやるんだという人はいるんだと思うんですけど、ただそれは理念、政策の違い以前の民主主義として逸脱していると思います。選挙の主役は有権者、政治の主役は国政であれば国民でありますので、国民の皆さんがそういう山際発言的なやり方を今後どう評価するかということだと思います」と語った。

山際担当相は青森県八戸市で3日に自民党候補の応援演説をした際、「野党の人から来る話はわれわれ政府は何一つ聞かない。生活を本当に良くしようと思うなら、自民党、与党の政治家を議員にしなくてはいけない」などと述べて反発が相次いだ。木原誠二官房副長官は4日の記者会見で、山際氏の発言について「岸田政権の考え方か」と問われ、「政府は国民の声を丁寧に聞き、国民の生活をしっかり守っていくことを基本としている。与野党問わず耳を傾け、野党を無視するようなことはしない」と釈明。松野氏が朝の時点で山際氏に「誤解を招くことがないよう発言に慎重を期してほしい」と注意したと明かした。

達増拓哉(たっそ・たくや)氏は岩手県盛岡市出身。東大法学部卒業後、外務省に入省。1996年の衆院選に新進党から岩手1区に出馬して初当選。当選回数4回。小沢一郎氏の側近の一人として活動。2007年、岩手県知事選に無所属(民主党推薦)で出馬して、2位の自民推薦候補に3倍差の45万票を獲得して当選。第16・17・18・19代岩手県知事(公選)。