中国のプロテニス選手行方不明 大坂なおみ、セリーナ・ウイリアムズらがツイッターで
「#whereispengshuai」のハッシュタグ

(2021年11月20日14:40)

中国のプロテニス選手彭帥さん、元副首相を告発後に行方不明 「#whereispengshuai」のハッシュタグ拡散
姿を現していない彭帥さん (Instagram/@ pengshuai_fanspage)

中国の張高麗元副首相を告発した中国のプロテニス選手、彭帥(ほう すい=35)さんの行方が分からなくなり波紋が広がっている。中国国営メディアが「行方不明ではない。私は安全にいる」という彭帥さんのものとするメールを公開したが、本人のものか疑問視する声が大勢を占め、大坂なおみ(24)やセリーナ・ウイリアムズ(40)が「#whereispengshuai(彭帥はどこに)」のハッシュタグをつけて事件に言及するなど波紋が広がっている。女子ツアーを統括するWTAのスティーブ・サイモン最高経営責任者(CEO)が中国撤退も辞さないとの強い姿勢で適切な調査を求めたと米CNNが報じた。一方、IOCは「彭帥さんの安全が確認された」と発表して、またしても「北京冬季五輪ありき」の姿勢が非難を浴びている。

米紙ニューヨーク・ポスト(電子版)によると、11月2日、中国のテニス界のスターであり、オリンピックに3回出場したこともある彭帥さんは、SNSで元副首相の性的暴行を告発した。しかし、検閲当局はすぐにこの告発を中国のインターネット上から削除。それ以来彭帥さんは公の場に姿を現していない。中国版ツイッターの微博(ウェイボー)に投稿したという。ロイター電によると、ホワイトハウスのサキ報道官は19日(現地時間)、「彭帥選手が、中国共産党幹部による性的暴行を告発した後、行方不明になっているとの報道に深い懸念を抱いている」と述べた。ちなみに日本のメディアの多くは彭帥さんが元副首相との「不倫を告白した」と報じている。

今週、女子テニス協会の会長兼CEOのスティーブ・サイモンは、彭氏を装ったメールを受け取ったが、そこには「私は行方不明ではないし、安全でないということもない。家で休んでいるだけで、何も問題はありません」と書かれていた。しかしこのメールは「彼女の安全と居場所についての私の懸念を高めるだけだ」と述べ、透明性のある調査を求めた。さらにサイモンは、この問題が自分の意に沿わない形で解決されれば、中国から「ビジネスを撤退しても構わない」と述べたという。

東京五輪開催強行をめぐってバッハ会長が“ぼったくり男爵“と米メディアに揶揄されたIOC(国際オリンピック委員会)は、またしても非難の的になった。IOCは「我々は最新の報道を見て、彼女が安全であるという保証に勇気づけられている」との声明を発表。同紙は「IOC委員会は中国共産党の意のままに行動し、驚くべき声明を発表した」と非難した。

さらに「IOCはかつて南アフリカのオリンピック参加を何十年も禁止することで、南アフリカのアパルトヘイトを終わらせるための世界的な努力に誇りを持って貢献していた。だが今日、IOCは権威主義者の足元にひれ伏し、虐待の犠牲者やアスリートの尊厳よりも自分たちの利益を優先している」と指摘した。

18日(現地時間)、バイデン大統領が大会の外交的ボイコットを検討していることを明らかにした。アメリカの選手は参加するが、アメリカの公式代表団は参加しないという。これはウイグルでの中国の人権侵害を問題にしたものだが、同紙は「あまりにも遅すぎる」とした上で「バイデン政権は北京から大会を奪うために国際的なリーダーシップを発揮することなく、10か月間手をこまねいていた。トランプ政権はその前に何年も手をこまねいていた」と指摘した。

そして「この事件は、中国でオリンピックを開催することの愚かさを浮き彫りにしている。自国の選手の安全を保証しない北京に、外国人選手の安全を保証する信用があるだろうか」と報じた。

■大坂なおみやセリーナ・ウイリアムズらがSNSで彭帥さん失踪事件に言及

大坂なおみはツイッターで「私の同僚の選手が性的虐待を明らかにしたのちに行方不明になったということを知らされた。検閲はどんな場合でも決して認められない。彭帥さんとその家族が安全で無事なことを願っています。現状にショックを受けており、彼女に愛を送ります」と英文でつづりハッシュタグ「#whereispengshua」を付け加えた。

セレーナ・ウイリアムズは「私の同期である彭帥さんのニュースを聞いてショックを受けています。彼女が無事で一刻も早く発見されることを願っています。この件は調査されなければならず、私たちは黙っていてはいけません。この非常に困難な時期に、彼女と彼女の家族に愛を送ります」とつづりハッシュタグ「#whereispengshuai 」を添えた。 男子世界ランキング1位のジョコヴィッチ選手(セルビア)は、「衝撃を受けた。彼女の無事を願っている」と述べた。