米ルイビル市、ブレオナ・テイラーさんの遺族と12億6000万円で和解  大坂なおみが全米OPでマスクに名前を記した黒人女性

(2020年9月16日22:30)

米ルイビル市、ブレオナ・テイラーさんの遺族と12億6000万円で和解
(ブレオナ・テイラーさん=インスタグラムから)

米ケンタッキー州ルイビルで3月、ボーイフレンドと就寝中に警官に射殺された救急医療従事者の黒人女性ブレオナ・テイラーさん(当時=26)の遺族が不当な死として市を相手取って提訴した裁判で15日(現地時間)、市が遺族に1200万ドル(約12億6000万円)を支払い、市警が再発防止に取り組むことで和解した。ブレオナさんは大坂なおみ(22)が全米オープンの1回戦でマスクに名前を記した女性で、F1王者のルイス・ハミルトン(35=英国)もサーキットで「ブリオナ・テイラーを殺した警官を逮捕しろ」と書いたTシャツを着て抗議していた。

米紙ニューヨーク・ポスト(電子版)によると、ルイビル市は15日(現地時間)、ブリオナ・テイラーさんの遺族との間で1200万ドルを支払うことで和解したことを発表した。和解金はルイビル市が2012年、不当に投獄された男性に支払った850万ドル(約9億円)を上回り、警察の不正行為の訴訟で市が支払う和解金としては史上最高額だという。さらに、同様の悲劇を防ぐために警察の改革も和解条項に加えられた。ルイビル市では、ブレオナさん銃撃事件の後、初の黒人女性の警察署長が就任したという。

市の記者会見で、ブリオナさんの母親のタミカ・パーマーさんは、「今日の和解はとても意義のあることですが、ブレオナのための完全な正義を得るためのほんの始まりに過ぎません。彼女の美しい精神と人格は、地上にいる私たち全員に働きかけています。どうか彼女の名前を言い続けてください」と涙をこらえて語ったという。

当局はブレオナさんの元ボーイフレンドが彼女の自宅に麻薬と現金を隠していたとみて捜索令状を取ったが違法なものは見つかなかったという。ルイビルメトロ警察はすべての捜索令状と宣誓供述書を事前に確認する指揮官を置くという。さらに、早期警告システムが導入され、潜在的に手に負えない警官を監視し、武力行使、市民からの苦情、その他の問題をチェックするという。また、警官が奉仕する地域社会で家を購入したり、ボランティア活動をしたりするために奨励金を支給するという。

遺族の弁護士ベン・クランプ、パーマーは、「我々はさらに進んでブレオナ・テイラーさんを殺害した警察官に対して直ちに刑事告発を行うことを要求しました」と語った。

■ブレオナ・テイラーさん射殺事件

ブレオナ・テイラーさん(当時=26)は、ケンタッキー州ルイビルの救急医療技術者で、2020年3月13日、ボーイフレンドのエイドリアン・ウォーカーさんとベッドで就寝していたときに私服警官3人が家に入ってきたため、ウォーカーさんは侵入者だと思って先に発砲。銃の所持免許を持っていたという。これに対して警官は20発以上発砲し、8発がテイラーさんに当たり死亡した。警官の主なターゲットは麻薬を販売していた別の2人の男性で、そのうちの1人がテイラーさんのアパートで麻薬を受け取った疑いがあるとして捜索令状を取っていたが、ノックをせず踏み込んだ。麻薬などは発見されなかったという。テイラーさんの家族は「人命の価値を全く無視して発砲した」として「不法な死」で警察を提訴。テイラーさんの死をめぐっては全米で抗議行動が起きて海外にも広がった。