「プロミシング・ヤング・ウーマン」 キャリー・マリガンが学生時代の事件を引きずり復讐に走る女性を熱演

(2021年1月17日22:20)

「プロミシング・ヤング・ウーマン」 キャリー・マリガンが学生時代の事件を引きずり復讐に走る女性を熱演
「プロミシング・ヤング・ウーマン」(東京・渋谷区のWHITE CINE QUINT)

「プロミシング・ヤング・ウーマン」(前途有望な若い女性)だった主人公のキャシーが大学時代に体験した悲惨な事件で約束されていたはずのコースから転落し、酔ったふりをして男の持ち帰りされて、土壇場で拒絶して男に毒づく異様な行為を繰り返すうちに、事件の当事者たちに復讐するために立ち上がるサスペンス・スリラーの話題作。「アンナ・カレーニナ」(2012年)、「リリーのすべて」(2015年)などで知られる英女優で小説家、脚本家のエメラルド・フェネルの監督デビュー作となった。本年度のアカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞(キャリー・マリガン)、編集賞にノミネートされた。

■ストーリー

30歳を目前にした独身のキャリー(キャリー・マリガン)は両親と同居し、カフェの店員として働いていたが、一方で夜な夜なナイトクラブで泥酔したふりをして居合わせた男性客に持ち帰りされるが、土壇場で拒絶した上に毒づいて男たちを震え上がらせて快感を味わいながら朝帰りしていた。そんなある日、大学時代のクラスメイトで小児科医になったライアン(ボー・バーナム)が店に現れて、恋に目覚めて交際するようになるが、同時に大学時代の悪夢がよみがえり、事件当事者たちに復讐するために立ち上がる。

■見どころ

キャリー・マリガンが過去の悲惨な事件を引きずったまま精神的に崩壊して、泥酔したふりをして男たちに罠を仕掛けて土壇場で逆襲するという屈折した行為を繰り返し、ついには事件当時者の男たちに復讐するために立ち上がる女性を熱演している。最初はキャシーがなぜそのような奇行を繰り返すのか真意は謎めいているが、次第に大学時代に彼女と友人が体験した残酷な事件の全貌が明らかになっていくにつれて、緊迫してゆきキャシーの復讐劇に引き込まれてゆく。「スーサイド・スクワッド」のマーゴット・ロビーのような突き抜けた疾走感、爽快感や派手なアクションはないが、復讐劇の意外な結末も含めてリアルで、その種の事件で女性が味わう精神的肉体的苦痛の想像を絶する苦痛やトラウマがうかがい知れ、近年のハリウッドの「#MeToo」運動で相次いで大物プロデュ―サーや監督、俳優らが告発されて明るみ出たセクハラ、性的虐待の闇の深さが改めて浮き彫りにされる。
(2021年7月16日公開)