「はるヲうるひと」 山田孝之、仲里依紗、佐藤二朗が鬼気迫る“壮絶熱演”

(2021年6月26日12:45)

「はるヲうるひと」 山田孝之、仲里依紗、佐藤二朗が鬼気迫る“壮絶熱演”
「はるヲうるひと」(テアトル新宿)

俳優の佐藤二朗が主宰する演劇ユニット「ちからわざ」で2009年に初演、2014年に再演された舞台を映画化した異色作。佐藤が原作・脚本・監督を務め、自身も出演し、山田孝之が主演、仲里依紗、向井理、坂井真紀が共演。さらに舞台版から出演している近藤洋子、笹野鈴々音、駒林怜、太田善也、大高洋夫、兎本有紀らが加わり5年をかけて完成させたという。2019年度第35回ワルシャワ映画祭の1-2コンペティション部門(長編監督2作目までの部門)に正式出品され、2020年の第2回江陵国際映画祭で最優秀脚本賞を受賞した。

■ストーリー

数多くの「置屋」が点在するとある島の「かげろう」という置屋が舞台。長男の哲雄(佐藤二朗)が店を仕切り、その凶暴な性格で恐れられていた。腹違いの次男・徳太(山田孝之)は哲雄に子分のように従い、港で本土からやってくる客の呼び込みをしながら4人の遊女の世話をしていた。徳太の実の妹いぶき(仲里依紗)は持病を患い客はとらず、虚ろな日々を送りっていたが徳太はそんないぶきを溺愛していた。癒し系遊女りり(笹野鈴々音)はミャンマー人のユウ(太田善也)の寵愛を受けるなど店の個性的な4人の遊女たちはそれぞれの春を売っていた。そうしたなか、哲雄がいぶきに手を出したことをきっかけに徳太が逆上し、3兄妹の父親の自殺をめぐる、本妻で哲雄の母親と、妾の遊女で徳太といぶきの母親のおどろおどろしい秘密を暴露し、3兄妹の闇が明らかになっていく。

■見どころ

客がゼロで沈黙してしまう徳太に罵詈雑言を浴びせた挙句に徳太の手をいきなり炭火が燃える火鉢に突っ込んだり、仁王立ちになり古株の遊女・純子(坂井真紀)に”奉仕“させ、徳太らを「クソだ」と吐き捨てるなど、どこまでも狂暴で凶悪な哲雄を佐藤が狂気をはらんだ演技で演じて見せる。そしてそんな哲雄に支配・搾取され地獄の底を這うように鬱屈した心の闇を抱える徳太を山田が熱演して真骨頂を見せている。さらに仲里依紗も遊女いぶきが乗り移ったかのように熱演をみせて新境地を見せており、3人の壮絶な”競演”が見ものだ。
また古株の遊女役の坂井真紀、中堅遊女役の今藤洋子、ミャンマー人のユウが足しげく通う遊女役の笹野鈴々音、新人遊女役の駒林怜がそれぞれユニークな遊女ぶりを見せて笑いとペーソスをこの映画に与えている。

■佐藤監督のコメント

佐藤監督は同作の公式サイトに以下のコメントを寄せて製作の経緯やこの映画に込めた思いを明かしている。

「映画『はるヲうるひと』は、僕の主宰する演劇ユニット【ちからわざ】で10年前に初演、多くの方々のご要望に押され5年前に再演した舞台の映画化です。架空の島の売春宿で生きる男女のおはなし。生きる手触りが掴めず、死んだように生きる人々が、それでも生き抜こうともがく壮絶な闘いのおはなし。ポーランドのワルシャワ映画祭のコンペディションに選出され、また、イギリスで日本映画を配給する会社「Third Window Films」は、昨年観た175本の日本映画の中から「はるヲうるひと」を1位にしています。誰も見たことのない山田孝之、誰も見たことのない仲里依紗、誰も見たことのない佐藤二朗をご覧頂けると確信しています。ご期待を。その膨らんだ胸に見合う作品だと思っています。」
(2021年6月4日より全国ロードショー)