「哀愁しんでれら」 土屋太鳳・田中圭・COCOがファミリーの幸福と狂気を競演

(2021年2月5日22:00)

「哀愁しんでれら」 土屋太鳳・田中圭・COCOがファミリーの幸福と狂気を競演
「哀愁しんでれら」(TOHOシネマズ 六本木ヒルズ)

「3月のライオン」などの脚本を担当した渡辺亮平監督のオリジナル脚本を土屋太鳳、田中圭、COCO、石橋凌、山田杏奈らのキャストで映画化したサスペンス。開票医と結婚してシンデレラストーリーのはずが次第に暗転してゆくファミリーのドラマを描いた「禁断の”裏“おとぎ話サスペンス」の異色作。脚本は映像クリエーターと作品企画を発掘するコンテスト「TUTAYA CREATOR’S PROGURAM FILM」で2016年にグランプリを受賞しており、本作は渡辺監督の商業映画監督デビュー作となった。

■ストーリー

児童相談所で働く福浦小春(土屋太鳳)は、自転車屋を営む実家で父親の福浦正秋(石橋凌)、妹の千夏(山田杏奈)、祖父と暮らしていたが、祖父が倒れて入院し、恋人は浮気、さらには実家が火事になり自転車屋は廃業と不幸が重なる。そうしたなか、泥酔して踏切の線路の上で寝込んでしまった開業医・泉澤大吾(田中圭)を助け、命の恩人といわれ高価な靴やドレスを買ってもらう。妻が事故死して8歳の娘のヒカリ(COCO)と2人暮らしの大吾はヒカリも気に入っている小春にプロポーズして結婚。豪邸に住み幸せな結婚生活が続くはずだったが、ヒカリが次第に豹変してゆき小春は振り回され、結婚生活は暗転する。反抗的になったヒカリに手を焼き手を挙げてしまったことから大吾は小春に怒りをぶちまけ、ファミリーの歯車が大きく狂っていく。

■みどころ

ドラマ「おっさんずラブ」などで人気、実力ともに兼ね備える田中圭が脚本を読んで「やります」と即決したという。そしてNHK連続テレビ小説「まれ」(2015年)でヒロインを演じ、「8年越しの花嫁 奇跡の実話」(2018年)で第41回日本アカデミー種優秀主演女優賞を受賞するなど活躍する土屋太鳳は「覚悟のないまま受ける物語ではない」とオファーを3回断ったうえで引き受けたというだけあって、まずは、「3月のライオン」(2017年)、「ビブリア古書土堂の事件手帖」(2018年)、「麻雀放浪記2020」(2019年)の脚本を担当した渡辺監督のオリジナル脚本によるストーリー展開が見どころになっている。絵にかいたようなシンデレラストーリーで始まり、小春になついて本物の母子のように仲が良かったヒカリの反乱や学校での不審な行動など意外な一面が次々に浮上して、小春が狂気に侵食されていく様子がリアルに描かれ予想外の結末が待ち受ける。
土屋太鳳が幸福の絶頂の輝かしいヒロインから娘や夫の豹変に振り回され壊れてゆくダークなヒロインまでを熱演。田中は小春に手を差し伸べる優しく裕福な王子様から、娘の負の部分が見えず溺愛して、娘に手を挙げた小春を激しく叱責する夫まで巧みに演じて見せる。そして8歳にして63万人のフォロワーを持つという世界的なキッズインスタグラマーとして知られるCOCOが、女優デビューとなる本作で愛くるしい少女から残酷さや凶暴さをむき出しにするモンスター少女役で体当たりの熱演を見せている。この3人の“激突競演”も見どころになっている。
(2021年2月5日公開)