映画「聖なる犯罪者」 少年院を出所後神父になりすました青年の数奇な運命

(2021年1月16日20:30)

映画「聖なる犯罪者」 少年院を出所後神父になりすました青年の数奇な運命
「聖なる犯罪者」(© 2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ.- WFSWalter Film Studio Sp.z o.o.- Wojewódzki Dom Kultury W Rzeszowie - ITI Neovision S.A.- Les Contes Modernes)

ポーランドの田舎町を舞台に少年院を仮釈放となった青年が新任の司祭と間違えられ、そのまま司祭に成りすまして聖職者としての仕事を続けたことから起きる様々な騒動を描いた異色作。ポーランドで実際にあった事件を題材に映画化した。主演は独特な個性を発揮して熱演したポーランド出身の俳優バルトシュ・ビレエニア。監督は本作が3作目となるポーランド出身のヤン・コマサ。最新作の「ヘイタ―」(Netflixで配信中)はトライベッカ映画祭のインターナショナル・ナラティブ部門で最優秀作品賞を受賞し、米HBOがTVシリーズ化することも決定したという。本作は第92回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた。(受賞は韓国映画「パラサイト 半地下の家族」)

■ストーリー

少年院で出会った神父の影響で熱心なキリスト教徒になった20歳の青年ダニエルは、前科者は聖職者になれないと知りながら神父になることを夢見ていた。仮釈放になったダニエル(バルトシュ・ビレエニア)は田舎町の製材所に就職することが決まったが、途中で立ち寄った教会で出会った少女マルタ(エリーザ・リチェムブル)に冗談で司祭だといったことから新任の司祭と勘違いされて、そのまま司祭に成りすまして仕事をするようになる。独特の個性で本物の司祭よりよっぽど深淵な説教をしたりして信頼を得てゆく。そうしたなか、村の若者など7人が死亡した交通事故があり、いまだに遺族が深い悲しみを抱え、車を運転していた運転手を逆恨みして教会も葬儀を拒否するなどトラブルになっていることを知り、問題を解決するか目にマルタに協力してもらい真相を突き止めようとする。すると村の有力者から深入りするなと言われ、さらには同じ少年院にいた男が現れて金銭を要求し、金を出さないなら過去の犯罪をばらすと脅され、事態は思わぬ展開を迎える。

■見どころ

ポーランドのクラフクにある国立アカデミー・オブ・シアター・アーツを卒業し2014年から2017年まで国立スタリ―劇場に所属し「リア王」などの舞台に出演したバルトシュ・ビィエレニア(28)が強烈な個性と圧倒的な存在感を見せて司祭に成りすます青年の孤独や狂気や宗教心などを熱演している。少年院を仮釈放になりクラブで激しく体をゆすり、ドラッグとセックスに身をゆだねるシーンから一転して、田舎の教会で司祭に成りすますうちに本物の司祭のように宗教の世界にのめりこんでいく主人公に目が離せなくなる。 ポーランド映画といえばアンジェイ・ワイダ監督の「地下水道」(1956年)、「約束の土地」(1975年)、「大理石の音」(1977年)などの一連の映画やロマン・ポランスキー監督の「水の中のナイフ」(1963年)など映画史に残る傑作が数多く馬得ているが、この「聖なる犯罪者」はそうしたポーランド映画健在なことを見せた作品といえそうだ。(1月15日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷ホワイト シネクイントほかにて公開!以降全国順次)