「薬の神じゃない!」中国の医療業界を震撼させた実在の男の数奇のドラマ

(2020年10月22日30)

「薬の神じゃない!」中国の医療業界を震撼させた男の数奇のドラマ
「薬の神じゃない!」(新宿武蔵野館)

2014年に中国で実際に起きた“ニセ薬”事件を題材にした中国映画で、中国で2018年に公開され興行収入30億元(約500億円)を超える大ヒットを記録した。またアジア香港国際映画祭の行事の一つとして授賞式が開催されるアジアの映画を対象にした第13回アジア・フィルム・アワードで助演男優賞を受賞したほか、台湾の映画賞の第56回金馬奨で主演男優賞、新人監督賞、脚本賞の3部門を受賞するなど数多くの映画賞を受賞した。主演は監督としても活躍するシュー・ジェン(徐崢)、その他、ワン・チュエンジュン(王伝君)、「スプリング・フィーバー」のタン・ジュオ (譚卓)、「象は静かに座っている」のチャン・ユー(章宇) などが脇を固める。監督はオムニバス映画「恋する都市5つの物語」(2015年)、「いとしの母国」(2019年)などのウェン・ムーイエ(文牧野)で、今作が長編デビュー作となった。

■ストーリー

上海でインドの強壮剤を販売する店主のチョン・ヨン(程勇)=シュー・ジェン(徐崢)=は、薬が売れず店の家賃を滞納し、妻にも見捨てられ失意のどん底にいた。ある日、慢性骨髄性白血病患者のリュ・ショウイー(呂受益)=ワン・チュエンジュン(王伝君)=が店に現れ、国内で認可されている白血病の治療薬は高過ぎるので、国内では認可されていないが成分は同じのインドの安価なジェネリック薬を輸入してほしいと依頼する。密輸は重罪になるため最初は断るが、金に困っていたチョン・ヨンはインドのジェネリック薬の密輸・販売に踏み切り、リュや白血病の娘を持つポールダンサーのリウ・スーフェイ(劉 思慧)=タン・ジュオ (譚卓)、英語を話せるリウ牧師(劉牧師)=ヤン・シンミン(楊新鳴)=、金髪の白血病患者ボン・ハオ(彭浩)=チャン・ユー(章宇)=らを巻き込んで、インドから大量に薬を密輸して売りさばき大儲けする。だが、やがて警察に「偽薬の密輸・販売」犯として目を付けられ、グループは解散に追い込まれる。しかし、安価な薬を絶たれた患者たちが苦しんでいるのを見かねたチョン・ヨンは、以前の仲間を集めて密輸を再開し、仕入れ値以下の価格で売り始める。やがて密告されて逮捕され裁判にかけられるが意外な結末が待ち受ける。

■見どころ

主演のシュー・ジェン(徐崢)が、とぼけた味でユーモラスに主人公のチョン・ヨン(程勇)を演じてジェネリック薬の密輸で大儲けする前半は香港映画のアクションコメディ―のようなテイストで展開してゆく。そして白血病患者を見かねて赤字覚悟でジェネリック薬の密輸・販売を再開する後半は、中国の当時の高額な治療薬を独占販売する製薬会社の問題や、警察との攻防もからんで社会派タッチでスリリングな展開になってゆく。そしてチョン・ヨン逮捕され裁判にかけられるクライマックスをめぐって感動的なシーンが待ち受ける。笑いあり涙あり感動ありのエンターテインメントになっている。 (2020年10月16日から新宿武蔵野館などで公開中)